見落とされがちですが、シリコンバレーはすばらしい財産に恵まれています。たとえば、米国の資本市場は投資案件の速やかな売却を可能にしていますし、法制度の信頼性は世界でも指折りです。先端研究の充実度も、依然として他国の追随を許しません。
歴史上初めて、頭脳流出は必ずしも一方向のプロセスではなくなったからです。シリコンバレーから生まれた技術によって、コミュニケーションのコストが大幅に下がったことが大きな要因です。今ではチームの半分が台湾に、半分が米国にいても、IMを使ってリアルタイムに、しかも安価に話をすることができます。長距離の移動やコミュニケーションも容易になりました。
この変化は中国やインドのような周辺国に大きなチャンスをもたらしました。周辺国は自国の精鋭を失っているわけではありません。これは従来の意味の「頭脳流出」ではないからです。国外に出た若者たちは母国に戻り、グローバルな技術製品の製造ネットワークに自国を結びつけようとしています。
グローバル化の過程で多少の人員交代が起きたことは事実です。米国のエンジニアは、これまでよりも多様なスキルセットを求められるようになっています。しかし、この2、3年で労働市場はふたたび技術者不足に陥り、過去に職を追われた人々をふたたび吸収するようになっています。初期の雇用の喪失は恒久的なものではなかったのです。
ローエンドの仕事はインドなどに国々に移りましたが、米国は新しい技術、アーキテクチャ、市場を定義することで、市場の進化に順応しています。
プログラミングや工学だけでなく、広範な教育を受けることを勧めます。多文化のチームで働くこと、自分が開発している製品の社会的な側面を理解することがますます必要となっています。
検索エンジンを開発するなら、人間と検索エンジンの相互作用を理解しなければなりません。20世紀後半は技術が主役で、ユーザーにはあまり注意が払われていませんでした。しかし、今日ではユーザーが製品にどう反応するかを理解することが求められています。
自分が理解している市場を選ぶことが重要です。ローエンドのハンドヘルド端末を中国人に販売する事業を立ち上げるなら中国で起業するべきです。研究開発の一部は米国で行ってもよいでしょう。
たとえば、iPodは米国を拠点とすることで成功した事業の典型です。iPodの価格は途上国の消費者には手の届かないものでした。設計、アーキテクチャ、顧客インターフェースに関する作業は最終消費者に近い場所で行うべきです。しかし、iPodの部品は台湾から輸入されました。台湾の工場の方が、米国の工場よりも効率がよいからです。
重要なのは技術力だけではありません。経営能力、顧客の理解、新しいニーズを満たし、定義するような製品を開発することも重要です。
新世代の情報専門家はソフトウェアのプログラミングやバックエンドの開発を理解しているだけでなく、法的環境や事業環境にも通じています。製品管理や社会科学の知識もあります。バークレー校のカリキュラムは学際的で、コンピュータサイエンス、社会科学、人類学を網羅しているだけでなく、ビジネススクールやロースクールとも連携しています。われわれはこれからの数十年間に活躍するのは、こうした人材だと考えています。
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