米連邦通信委員会(FCC)は米国時間10月3日、メディア業界の整理統合に関する公聴会を開催した。その中で、多くのエンターテインメント業界関係者やマスコミ関係者が、インターネットなど新たな配信経路が次々に生まれている状況であっても、メディア業界の整理統合が進み過ぎればニュースやエンターテインメントの多様性が損なわれると指摘した。
ロサンゼルスで開催されたこの公聴会では、テレビプロデューサー、音楽家、俳優、作家らが証言し、その中で上記の見解を述べた。FCC主催の公聴会は、全米各地で6回開催される予定で、今回はその第1回目だった。Kevin Martin委員長と全5人の委員らがカリフォルニアに赴き、現地で2つの公聴会を開催した。その中で委員らは、フリーのメディアプロデューサーやクリエイティブアーティスト、さらにメディア複合企業自体の意見を求めた。
ロサンゼルスにある南カリフォルニア大学(USC)のDavidson Conference Centerで開催された最初の公聴会では、メディア業界の整理統合が公共の放送電波上で米国民が視聴する番組の多様性を損なうか否かに的を絞って議論された。FCCの委員らは、人気ロックバンドR.E.Mでベースを担当するMike Mills氏、1970年代に放送された探偵番組「ロックフォード氏の事件メモ(原題:Rockford Files)」のプロデューサーであるStephen Cannell氏、さらに「The X-Files」「JAG」「Dharma & Greg」などの番組に出演した女優のAnne-Marie Johnson氏といった業界の著名人から意見を聞いた。
その結果、最初の公聴会で証言したプロデューサーやアーティストらは、前述の質問に対し、(メディア業界の整理統合が番組の多様性を)大いに「損なわせる」と答えた。
大手メディア企業らは、市場内の競争が激化する中、事業の整理統合をより自由に行えるようにする必要があると主張してきた。一方、消費者団体、公民権運動の指導者、フリーのコンテンツプロデューサーやジャーナリスト、その他のメディア、エンターテインメント業界関係者らは、(メディア業界の)整理統合は、創造性や多様性を台無しにすると主張している。
米国の脚本家組合Writers Guild of America, WestのPatric Verrone理事長は、「均質化は立場の弱い者を搾取するには良いかもしれないが、それではアイデアあふれる良い作品は生まれない」と語った。
過去には、インターネットのような新技術が番組の多様化への道を切り開くとの議論もあったが、パネリストらはそれらの議論に触れようとはしなかった。
全米映画監督組合(Directors Guild of America:DGA)のバイスプレジデントTaylor Hackford氏は、「インターネットが急拡大しているからといって、ゴールデンタイムに既存の放送網で配信される番組の問題から目をそらしてはならない」とした上で、「従来からのテレビ放送は依然として最もよく視聴されており、そこで流される宣伝は、依然各放送局にとって主要な収入源になっている」と語った。
Hackford氏はさらに、過去10年間、大手テレビ放送局がメディア制作会社との統合や合併を進めてきたため、フリーの制作者らが独自に制作するテレビ番組の数は減少してきた、と指摘した。フリーのプロデューサーたちは、「となりのサインフェルド」「大草原の小さな家」「コスビーショー」など、米国民が愛した多くのキャラクターやテレビ番組に生命を吹き込んできた。
Hackford氏によれば、1993年の時点では放送されるテレビ番組の約66%がフリーのプロデューサーによって作られていたという。それから13年後の2006年時点では、フリーのプロデューサーの手による番組は放送されるコンテンツ全体の約22%まで減り、76%がテレビ放送局によって制作されているという。
同氏は、FCCが大手放送局4社(ABC、NBC、CBS、Fox)に対し、放送される番組の25%以上がフリープロデューサーの手による番組になるよう規制を課すことを提案した。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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