ソフトバンクグループ傘下で、動画配信事業を手がけるTVバンクは9月26日、PtoP技術を使った動画配信システム「BBブロードキャスト」を中国Roxbeam Media Networkと共同で開発したと発表した。すでにYahoo!動画上でこのシステムを使っており、2万5000人が同時接続した状態で動画を配信できたという。
BBブロードキャストはオーバーレイマルチキャスト(OLM)と呼ばれるPtoPベースの技術を利用する。これは専用アプリケーションをインストールしたPCが、サーバから送信されたデータをほかのPCに次々に転送することで多くのユーザーにデータを配信する技術だ(図1)。既存の配信技術に比べて大規模な設備投資が要らず、複数の異なるISPを経由して配信できることから配信コストを抑えられるというメリットがある。
なおPtoP技術を使った動画配信技術としては、PtoPソフト「Winny」の開発者である金子勇氏が開発に参加したドリームボートのSkeedCastなどがある。
TVバンクでは、OLMをベースに商用サービスでも利用できるよう安定化技術や著作権保護技術などを盛り込んだ。具体的にはまず、データの再生開始時間を早めるようにPtoPを使わずに直接ユーザーのPCにデータを送信する「配信支援サーバ」を用意し、ユーザーが90秒以内にデータを再生できるようにした。
このほか、1つのPCが常に複数のPCと動的に接続するようにし、安定性を高めた。著作権保護については、動画データを細分化、暗号化した上で配信し、再生PC上で再構築する形をとった。このため、インターネット上で流れるデータを第三者が取得しても、データの加工等はむずかしいという。データはすべてPCのメモリ上で処理されるため、ハードディスクには残らない。
Yahoo!動画で9月22日に配信されたEXILEのライブコンサート映像の配信には、このBBブロードキャストが使われた。768kbpsのビットレートで、同時に2万5302人に対して配信したという。この技術を使うことで実際の配信データ量を理論値の5分の1にまで減らせたとのことだ(図2)。
「配信データ量はコストにそのまま結びつくため、BBブロードキャストを利用することで配信コストを大幅に下げられる」とTVバンクシステム統括部統括部長の川原洋氏は自信を見せた。
現在はストリーミング配信にしかこの技術を使えないが、今後はビデオの巻き戻しや任意の場所からの再生などができるようにし、ビデオオンデマンド(VOD)サービスでも利用したい考えだとした。
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