中国:オンラインデートサービスの王者に聞く

文:Cliff Miller 翻訳校正:編集部2006年09月21日 08時00分

 CNET News.comでは、Mountain View Dataの最高経営責任者(CEO)、Cliff Miller氏がアジアのテクノロジー業界のリーダーを対象に行っているインタビューを随時掲載している。Miller氏は数年前からアジアに拠点を置き、精力的にビジネスを展開している。今回はその中よりMarine Ma氏のインタビューを掲載する。

 Marine Ma氏はまだ30歳にもなっていないが、今の会社はすでに3社目だ。

 現在、Marine氏はEFriendsNetのCEOを務めている。EFriendsが提供するソーシャルネットワークサービスは、オンラインデートサービスの顔も備えている。EFriendsは会員数でも売上高でも、中国のオンラインデートサービス市場のリーダーを自認している。

 私がMarine氏と初めて会ったのは2005年11月末、Dow Jonesの主催で開催された「Asian Ventures」カンファレンスの席上だった。私とMarine氏はどちらも、この会議でプレゼンテーションを行うことになっていた。

 私は先頃、Marine氏にインタビューを行い、中国でインターネット企業を立ち上げる難しさ、オンラインデートサービスの未来、そして検閲に関わるさまざまな問題について話を聞いた。

--前回お会いした時は、あなたが最初に立ち上げた企業「Fanso」の話をお聞きしましたね。

 Fansoは1999年から2001年まで活動していました。Fansoは私と精華大学の卒業生数人で作った会社です。中国の大学生を対象に、ニュースなどの情報や音楽のダウンロードサービスを提供していました。

--Fansoは学生が経営する企業としては初めて、中国政府から営業許可を得た会社だったとか。

 そうです。それまでは大学生が在学中にビジネスを行うことは法律で禁止されていました。しかし、(中国の)教育省は法律の改正を検討していました。米国のMicrosoftは、Bill Gates氏が大学を中退して立ち上げた企業だと知ったからです。おかげで、われわれはチャンスをつかむことができました。タイミングがよかったのです。

--Fansoの音楽ダウンロードサービスはどのようなものだったのですか。

 完全に無料のダウンロードサービスでした。もちろん違法でしたが、当時は誰も気にしていませんでした。インターネット産業はまだ成熟しておらず、「その音楽は違法だ」と言ってくる人はいませんでした。おそらく、Fansoが無料のサービスだったからでしょう。

--しかし、Fansoは失敗に終わりました。何が問題だったのでしょうか。

 2000年と2001年にインターネットバブルが崩壊し、ベンチャーキャピタルの足が中国から遠のきました。資金が底をつき、ゲームオーバーとなったわけです。しかし、もっと致命的な理由がありました。それは、われわれにビジネスの経験がなく、ビジネスのやり方を知らなかったことです。

--どのくらいの資金を調達したのですか。

 600万元です(約75万ドル)。それほど大きな額ではありませんが、学生にとっては大金でした。

--パートナーは何人いましたか。

 5人です。いっときは80人近い従業員がいましたが、収益はゼロでした。最悪だったのは、収益をあげる必要があると思っていなかったことです。

--他の創設メンバーとの折り合いはどうでしたか。

 どんな会社もそうだと思いますが、創業の頃は誰もが好人物です。まるで天使です。しかし、プレッシャーや難題に直面すると問題が生じてきます。ある時、1000万元(約150万ドル)でFansoを買いたいという企業が現れました。われわれは役員会を開き、どうするかを話し合いました。6時間以上も議論し、口論したあげく、この話は断ることにしました。

--あなた自身はどうしたいと思っていたのですか。

 私は1000万元で売却する方に賛成でした。この頃、私は他の創設メンバーに不満を持っていました。しかし、今は友だちです。私の現在の会社、EfriendsにはFansoの創設メンバーも参加しています。

--Fansoは倒産したとおっしゃいましたが、その次は何をしたのですか。

 NetEaseに入社しました。その前の2、3カ月間は自宅で過ごし、これまでのことを振り返ったり、自分の将来について考えたりしました。NetEaseではワイヤレス事業を担当しました。当時、つまり2001年末の中国ではワイヤレスビジネスは新興市場にすぎず、私はこの種の事業を進める方法を学びたいと思っていました。私はすでにFansoの経験から教訓を学んでいました。それは、事業を成功させるためには収益性を確保しなければならないということです。

 私がNetEaseに入った時、ワイヤレス部門全体の売上高は1月あたり100万元程度だったと記憶しています。2年後に同社を退社する頃には、1月あたりの売上高は4000万元(500万ドル)近くに上っていました。

--次に、あなたはデートサービス会社を立ち上げました。これがEfriendsです。今後の計画を教えていただけませんか。

 われわれは5カ年計画を立てています。最初の2年、つまり2006年と2007年の目標は会員を増やすことです。2008年には中国でオリンピックが開催されます。これがアジアでEfriendsブランドを確立するよい機会になると思っています。中国にやって来た外国人に、「中国で人生のパートナーを見つけたいならEfriendsにお越しください」と呼びかけるつもりです。

--Efriendsには売春などの問題はないのですか。

 中国のオンラインデートサービス産業にはいくつかの問題があると思います。詐称の問題、信用の問題、支払方法の問題などです。しかし、ソリューションはあります。

--今、最も頭を悩ませている問題は何ですか。

 (現在の)バブルですね。競合企業が増えたおかげで、市場全体の啓蒙は進んでいると思います。問題は、競合企業がうちの2倍も3倍も高い給料を出すことです。当社を辞めて、他社に移る者も出るでしょう。競合企業がマーケティングに金をかけているので、いきおい当社のマーケティング費用も増加することになります。新聞の広告枠を買おうとしても、競合企業が新聞社にかけあい、「うちは2倍出す」と言うかもしれません。

--競争に勝つためにはどうすればいいのでしょうか。

 現時点で黒字なのはEfriendsだけだと思います。そうでないとしても、中国のオンラインデートサービス会社のうち、利益が出ているところは数えるほどでしょう。当社のソーシャルネットワーキングデータベースは他社のデータベースとはまったく違います。EfriendsNetを検索すれば、会員は(自分が興味を持った人物と)自分の間につながりがあるかどうかを見つけることができます。そうすればもっと気楽に、安全にデート相手を探すことができます。

--あなたはとてもお若いですが、アジアには年長者を敬う文化があります。中国の場合、若いCEOは苦労するのではありませんか。

 おっしゃる通りです。私はこの9月で30になります。苦労はいろいろありますね。当社の顧客やパートナー(ChinaMobileの出身者など)はほぼ例外なく、私より年上です。重要な役職に就いている人は軒並み40歳以上です。しかし、そうしたことにも慣れてきました。最初は、こんな若造に何ができると思われるでしょう。しかし何度か会って話をすれば、私が価値をもたらす人間であることを分かっていただけると思います。

--米国ではこの数カ月、米国企業が中国政府に情報を提供し、中国政府の政策実行を支援していることが大きな論議を呼んでいます。たとえば、Googleは中国でビジネスを行うためには政権に協力しなければならないと主張していますが、多くの米国人はこのような意見に賛成していません。あなたはどう思いますか。

 中国は変わりつつあると思います。マインドの面でもそうですし、制度そのものもそうです。しかし、現在の中国でビジネスを成功させるためには、現状を受け入れ、ルールにしたがって行動するほかありません。時々思うのですが、ルール作りに参加することが最良の方法かもしれません。

--Efriendsの事業は中国政府の規制を受けていますか。

 業界全体に対しては、いくつかの規制が設けられています。たとえば、インターネットサービスを提供するためにはライセンスが必要です。しかし、オンラインデートサービス事業に特化した規制はありません。わいせつな画像を掲載しないといったことくらいです。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]