8月後半以降の東京株式相場は、日経平均株価が1万6000円を挟んでの小幅な値動きでこう着状態が続いている。
準大手証券の都内支店の支店長は「6月の年初来安値からここまでの回復相場をけん引してきたのは、鉄鋼や非鉄、石油、不動産などのいわゆる資源関連や内需関連の銘柄群。しかし、さすがにこれらのセクターには買い疲れ感が出ており、市場は“次のけん引役”を求めている。本来であれば、ハイテク株の出番を望みたいタイミングだが、その中での細かな業種や個別企業によって収益格差が千差万別で、兜町お得意の“テーマ相場”による物色につなげるには至らないのが実情だ。こうしたなかで珍しくハイテク株の相場テーマとして浮上してきそうなのがマイクロソフト社の次世代基本ソフト(OS)“Vista関連”だ」と予測している。
マイクロソフトは9月5日、Windows Vistaの米国での販売価格を199〜399ドルと正式発表した。依然として発売時期は未発表だが、現在のところ2007年1月末が有力視されている。PC関連業界では2001年秋に発売した現行のOS「XP」以来の一大イベントとなる見通しだ。ビスタの最大の特徴はグラフィック機能の強化とされており、起動用のメモリだけでも「XP」(512Mバイト)の2倍に相当する1Gバイトが必要といわれている。すでに、Vistaが快適に作動するためのハード環境を備えたPCが各社から発売されつつあるが、これが本格化して出揃うのは今秋の10月から来年春にかけての見通しだ。
こうした環境のなかで、Vista関連の物色対象として株式市場で注目を集めているのが、半導体シリコンウエハの大手である信越化学工業とSUMCOだ。特にSUMCOはデジタル家電やPC向けの半導体に使用されるシリコンウエハの需要が高い伸びを示しているのをはじめ、大口径の300ミリウエハーの比率が高まることによるコスト低減効果なども功を奏して、2007年3月期の連結売上高が2700億円(前期比22%増)、営業利益は690億円(同56%増)と大幅な増収増益となる見込みだ。
株価も7月半ばの6000円水準から一貫してハイピッチで上昇を続け、すでに8800円台に乗せてきたものの、依然として先週末9月15日の終値で試算した今期の連結PERは15倍台水準と割安状態にある。市場では近い将来の1万円台乗せを指摘する見方が支配的だ。
このほかのVista関連銘柄としては、半導体製造装置関連のアドバンテスト、東京エレクトロン、東京精密や、国内では唯一のDRAM専業大手のエルピーダメモリにも注目が集まりそうだ。
中堅証券の投資情報部では「目前に迫った安倍政権の誕生で、兜町関係者の間には、これに事寄せてご祝儀的な株高を期待するムードがあることも確か。こうした半導体関連のハイテク銘柄には日経225採用の銘柄も多く、しかも株価の高い値がさ株が多いことから日経平均への寄与度(*)が高い。したがって、こうした銘柄をテーマに乗せて集中的に物色すれば、平均株価が極端にハネ上がるといった思惑もあるようだ」とのうがった見方も出ている。
*日経平均株価への寄与度……日経平均株価は単純平均型の株価指数のため、225ある採用銘柄の中でも、値がさ(株価の高い)銘柄のほうが指数変動への影響度が低位(株価の安い)株に比較して格段に大きくなる傾向がある。
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