Web 2.0という言葉に集約されるように、インターネットが以前から語られてきたその本来の姿を現し始め、知識を醸成するためのプラットフォームとしての機能を担えるようになりつつある。
このことは企業に、「必要な知識がどこにあるのか?」という本質的な疑問を投げかけている。
4月のMITSloan Management Reviewに、ハーバードビジネススクールのAndrew McAfeeによる「Enterprise 2.0:The Dawn of Emergent Collaboration」という論文が掲載されている。
McAfeeの問題意識は、ITの活用により、社内にありがちなフォーマルなものではなく、組織にあまり拘束されず、より自然で普段のインフォーマルなものに近いコラボレーションを実現できないだろうかというものである。ブログやWikiなどのコミュニケーションツールを社員に提供したヨーロッパの投資銀行のケーススタディをベースに書かれたこの論文は、新たなテクノロジーによるナレッジワーカーの活発なコラボレーションの進展を指摘する。
ここで論じられている「エンタープライズ2.0」は、従来のナレッジマネジメント論に近く、「イントラネット2.0」と考えたほうがわかりやすいかもしれない。その意味ではこれまでのナレッジマネジメントとの違いが不明瞭であるとの批判もされている。
しかし、最近エンタープライズSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)のようなツールの導入を検討する企業は増加しつつあり、インフォーマルに近い形でのナレッジワーカーによるコラボレーションは、新たな技術の活用により進んでいくことだろう。
McAfeeの論文と時期を同じくして、2006年4月3日号の日経コンピュータには「エンタープライズ2.0:Webが開く新基幹システム」という特集が掲載されている。日経コンピュータは、エンタープライズ2.0を「ビジネスで成果を上げるための情報を、社内外問わず活用できる企業であり、それを実現できる情報システムである」と定義し、主に「外部の情報コンテンツ」を社内の情報システムに組み込もうとする流れの総称として「エンタープライズ2.0」を論じた。
社内のナレッジワーカーに注目するのではなく、外部の情報を社内に取り込むという点において、ここで論じられるエンタープライズ2.0は従来のナレッジマネジメント論とは多少異なっている。確かにウェブを通じて公開され、企業情報システムに活用できる情報コンテンツは数多いし、増加傾向にある。そして、APIを公開する企業数も増加するだろうから、この流れも加速するのだろう。
これらは多少異なるものの、いずれも社内の情報を有効活用して社内の知識の蓄積を高める方法に関して論じたものである。これに対し、2006年6月にWiredに掲載された、同誌編集者であるJeff Howeの「The Rise of Crowdsourcing」という記事は、社内の情報、あるいはナレッジワーカーのような社内の資源に関して論じることなく、企業が知識を有効活用する方法論を提示している。“Crowdsourcing”とはその名の通り、“wisdom of crowds”(群衆の知恵)と“outsourcing”(外部委託)をかけた造語で、意味もこの掛け算の通り理解してかまわないだろう。
この記事では、初めに特定の写真を必要とする人たちが、プロではなく不特定多数のアマチュアカメラマンの写真をより安価に利用できるようになったことを、ShutterStockのような、オンラインの写真販売サイトを例に挙げて説明している。そしてこの例から、場合によっては安価な労働力を求めてインドや中国にアウトソースする必要性が低下していることを指摘する。
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