Microsoftが2006年末頃にリリースする予定のInternet Exprorler 7.0(IE 7.0)に対する議論が巻き起こっている。IE 7.0に韓国のポータルサイトが難色を示しているからだ。
MSのIE 7.0には、URL入力ウィンドウと検索ウィンドウが同時に搭載されている。Microsoft側の主張によると、URLを知っている場合にはURL入力ウィンドウにこれを入力して該当サイトへ行き、URLを知らない場合は検索ウィンドウにキーワードを入力すれば、指定の検索サイトから検索結果を表示できるようにしてユーザーの便宜をはかっているとのことだ。
しかし業界ではMicrosoftが検索ウィンドウに、自社のポータルサイト「MSN」を設定した点が問題だと指摘している。
これに対しMicrosoftは独占だとの非難を避けるため、とある方法を選択した。それはIE 7.0をPCにプレインストールして販売するPCメーカーが、自社の好みに合わせ検索ウィンドウの検索エンジンを変更できる権限を与えるということだ。
ただしここでも問題点がある。PCメーカーに検索ウィンドウ変更の権限を与えれば、Hewlett-PackardやDell、富士通、レノボ、東芝といったグローバルPCメーカーはグローバルポータルサイトのMSNやGoogle、Yahooなどと提携しやすい反面、韓国のポータルサイトはグローバルPCメーカーと提携することが難しいという点である。
韓国人の好みを徹底追求し、それに合ったサービスを提供することで成長してきたのが韓国のポータルサイトの特長だ。それにより韓国のポータルサイトは韓国市場で外資大手の追従も許さないほど強大な力を持つことになった一方、Naverの日本市場での状況を見ても明らかな通り、海外市場では苦戦している。彼らが今さら、グローバルPCメーカーと提携し始めようとは言っても、一番手っ取り早い提携先はサムスン電子やLG電子というところになるだろう。
こうした状況に心中もっとも穏やかでなさそうなのが最大手のNaverだが、同社は今のところ静観の構えを見せている。その理由の1つとして挙げられるのは、韓国のメッセンジャー市場の実状である。
韓国ではMSN Messengerが2005年3月、SK Communicationsの「NATE ON」に利用率1位の座を明け渡している。その後も順位に変動はなくトップ返り咲きの兆しも見えない。2006年6月、韓国市場での起死回生を狙ってリリースされた「Windows Live Messenger」も、IE 7.0と同じタイプの検索ウィンドウを持ってはいるものの、今のところ検索市場の動向に大きな変化はない。
こうした傾向はポータルサイトでも同様だ。インターネット調査会社Rankey.comによると、ポータルサイトの検索部門において、ページビューや到達率(サンプリングされた全インターネット利用者中、特定サイトを利用するユニークユーザー数)といった数値を総合した「占有率」を比較するとNaverやDaumなどの韓国ポータルサイトが上位に多く登場する反面、MSNは10位以内にも入っていない。
ただしこうした状況に甘んじてばかりもいられない。例えばNATE ONを使用率1位に押し上げた最大の理由である携帯電話のSMS無料送受信機能は、既に2005年3月から韓国版のMSN Messengerにおいて韓国2位のキャリア(携帯電話事業者)であるKTF向けに搭載されている。
Microsoft Koreaによると、他のメッセンジャーからMSN Messengerに乗り換えた理由としてもっとも多いのはこの無料SMS送信機能で、全体の49%に上っているという。そこでWindows Live Messengerではこのたび新たにSK Communicasionsと同じ系列の企業で韓国1位のキャリアであるSK Telecomとも提携。100件までのSMSおよびMMS無料送信機能の提供を開始した。
さらにMicrosoft KoreaはWindows Live Messenger用のウェブカメラ販売まで行うなど、マルチメディア好きの韓国市場に合ったサービスを提供することでユーザーのさらなる確保を狙う。韓国市場での1位奪還のため、世界1位のメッセンジャーが容赦ない猛チャージを見せている。
IE 7.0の検索機能はそうした意味でもあなどれないものがある。とくに海外市場では劣勢の韓国ポータルサイトは、緊張感を持ってこれに対応する必要がありそうだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」