世界最大のパソコンメーカーDellの創業者Michael Dell氏は、IBM PCの誕生から四半世紀を経た今も、パソコン技術がピークを迎えるのはまだまだこれからだと考えている。
IBMが初めてパソコンを世に送り出してから25年が経った。Apple Computerがその初期の製品で当時のコンピュータ愛好家たちの心をつかんだのとは対照的に、IBM PCは企業家たちの関心を呼び起こし、パソコンは単なる「遊び道具」ではないと彼らに気づかせた。
Michael Dell氏は、当時の多くの若者がそうであったように、宿題を楽に片付けようとしてPCを使い始めた。しかし、パソコンの潜在能力がいかに大きいものかを正しく認識していた者はほとんどいなかった。そして、その点はDell氏の両親も同じであった。Dellの創業から20年以上経ったが、実は、Dell氏の両親は、テキサス大学を辞めて起業するという彼の決心に必ずしも賛成ではなかったという。しかし、その後、社名に彼の名前を冠したパソコンメーカーは着実に成長し、2005年には560億ドルを売り上げるまでになった。
PC業界では今、25年の成長と成功の跡を振り返る機会が多い。Dell氏に、PCとの出会い、PCが家庭や企業に短期間で受け入れられた要因、そしてPCの今後について聞いた。以下にインタビューの一部を抜粋する。
高校時代、私は当時RadioShack PC(ラジオシャックPC)と呼ばれていたパソコンでいろいろと遊び始めました。私がパソコンをいじるようになったのはそれが最初でした。
確か800ドルくらいだったと思います。価格も処理能力もそれほど高いものではありません。ハードディスクではなくカセットドライブを装備していました。当時はまだ、フロッピーディスクもなかった。プログラムはほとんどBasicで書いていました。私はこのマシンの処理能力に魅せられてしまいました。いろいろなことができた。それがどういう意味を持つのかを考えるとわくわくしたものです。それは私にとって本当に魅惑的なマシンでした。
いろいろとプログラムを書いて、数学の宿題をやらせていました。膨大な量の計算をあっという間に片付けてしまうこのマシンにすっかり魅了されてしまいましたね。PC産業の黎明期には、こうしたマシンが、医療、ビジネス、教育、娯楽といった分野で導入され、何か大いなる期待感が存在していたようです。もちろん、その先何が起こるのか誰にも分かりませんでしたが、とてもわくわくさせられる時代でした。
私が大学を中退したのは、まさにそう考えたからこそです。それが、1984年のことです。そして、その年、起業しました。もっともっと多くの人たちがパソコンを使えるようになり、パソコン自体も使いやすくなるだろうということ、そして、わざわざ店舗に足を運ばなくてもパソコンが直販されるようになるだろうということさえ、既にその頃から確信していました。われわれは80年代初期の頃から既にそうした空気を感じていたのですが、もちろん、そんなことを考えているとは誰にも言えませんでした。このようにして私はこの業界に第一歩を踏み出したのです。
いえ、特に説得はしませんでした。もちろん、両親は反対でした。ですが、私は従わなかった。18、9の若者がやりたいと思ったことをやって、それがすべてうまくいったということです。
それは、面白い質問ですね。確かにIBMがそれを許したことは、大きかった。おかげで、パソコン業界のエコシステムができあがり、それが今でも、個人向けだけでなくエンタープライズ分野でのコンピュータ技術の発展に極めて重要な役割を果たしています。それ以前は、プロプライエタリな、あるいは半プロプライエタリなPCしか存在しなかったため、ユーザーコミュニティから「一度アプリケーションを開発したらどのマシン上でも動かせるような標準は確立されないのか」という声が高まっていました。
もし、IBMがPCを厳重にコントロールする方針を採用していたら、市場は今よりずっと小さく、進化のスピードもはるかに遅いものになっていただろうということは言えると思います。また、各パーツはより高価なものとなり、コンピュータ技術が現在のように大きな影響力を持つことはなかったでしょう。でも、IBMとMicrosoftがやらなかったとしても、他の誰かが同じことをやっていた可能性もありますね。つまり結局は今と同じことになっていたと。それも十分にあり得たでしょうね。
1981年に発表されたオリジナルのIBM PCは、当然ながら、極めて重要な意味を持っていました。あのPCが世に出たおかげでパソコン業界は繁栄への道を歩み始め、さまざまな企業がこの業界に参入できたのです。拡張カード、ソフトウェアアプリケーション、あるいはチップセットを開発する企業もあれば、新しい方法でアーキテクチャを拡張し、新しい価値や代替価値を提供する製品を市場にもたらす企業もありました。
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