Bruce BaikieとMarc Pomerleauの両氏は、ワイヤレスネットワークに地球に優しい技術を組み合わせようとしている。
2人が運営する「Green Wi-Fi」は、太陽電池を使って安価にWi-Fiネットワークを構築し、途上国の学校にインターネットアクセスを提供することを目指す新しい非営利団体だ。Green Wi-Fiは多くの親が共感する願い--「人生には会社での出世競争より多くのものがある」ということを子どもたちに伝えたいという願いから生まれた。
「親になると、子どもに自分の人生をどう説明するかを真剣に考えるようになる」とPomerleau氏は言う。
Pomerleau氏は最近までSun Microsystemsのアイデンティティ管理製品のマーケティングチームに所属していたが、Green Wi-Fiの活動に専念するために同社を退職した。共同設立者のBaikie氏は今もSunで働いている。
Green Wi-Fiのネットワークは技術的にはとてもシンプルだ。各ノードはバッテリ駆動型のルータとバッテリを充電するための太陽電池パネルで構成されている。ノードは屋根に設置され、無線LAN規格「802.11b/g」を使ってネットワークのWi-Fi信号をグリッド経由で伝える。
Green Wi-Fiはすでに最初のシード資金を獲得している。プロトタイプノードを作成し、テストするには十分な額だ。資金を拠出した「One Laptop Per Child(OLPC)」は、100ドルのノートPCを開発して途上国の子どもたちに提供することを目指すプロジェクトだ。Pomerleau氏によれば、OLPCはGreen Wi-Fiの活動に設立直後から関心を示していたと言う。
「OLPCが100ドルのノートPCを提唱すると、きまって『ネットワークはどうするのか』という批判が出る。接続機能がなくてもゲームで遊んだり、表計算ソフトを利用したりすることはできるが、コンピュータの真価は世界中の情報にアクセスできるところにある」(Pomerleau氏)
2人がWi-Fi技術に目を付けたのは、この技術が標準化されており、比較的安価に、かつ簡単に配備することができるからだ。途上国でWi-Fiシステムを運用するためには、安定した電源をどう確保するかが鍵になる。電力を安定的に利用できない人は数十億人に上るが、太陽光に事欠く途上国はほとんどない。
Bruce Baikie氏とMarc Pomerleau氏が直面した大きな問題のひとつは、どんな気象条件でも機能する太陽電池システムを開発することだった。太陽光を利用した商用システムは入射光がなくても最長1週間は動作する。しかし、インドのモンスーン期や熱帯地方の雨期は1カ月に及ぶこともある。
これが先進国なら、バッテリと充電用の太陽電池パネルを大きくすることで問題を解決できるだろう。しかし、それではコストがかかりすぎる。2人はコストの上限を1ノードあたり200ドルと定め、「エレガントな性能低下」を目指すことにした。
「われわれが提案しているのは知的な充電コントローラだ。このコントローラを使うと、ルータに送られる電力を抑制することができる」とPomerleau氏は言う。コントローラはバッテリとルータの間に設置され、バッテリの充電状況や入射光の量に合わせてルータに送る電力を制御する。
このコントローラにはBaikie氏が開発したソフトウェアが使われている。Green Wi-Fiのシステムはまずユーザーを複数のカテゴリに分類する。初期設定では、すべてのユーザーがネットワークに接続できる。電力レベルがやや低下すると、特定のグループの接続が切断され、特定の学年または教師のみが接続できるようになる。電力レベルがさらに低下すると、システムは帯域幅を制限する(例:メールは送信できるが、オンラインで動画を見ることはできない等)。学校が開いている時間帯以外はネットワークを切断することも可能だ。設定はすべて、ウェブベースのシンプルなインターフェースを通して行うことができる。
最初のプロトタイプはごく簡単なつくりで、これが厳しいテストをくぐり抜けた。3月初旬、Baikie氏はサンフランシスコの自宅の屋根に太陽電池パネルを設置し、ルータと充電コントローラを取り付け、台所からくすねた防水タッパーでふたをした。ベイエリアではその後28日間連続で雨が降ったため、装置は限界までテストされることになった。
しかし、ネットワークは切断されなかった。「ネットワークが1度も落ちることなく月末を迎えた時、手応えを感じた」とPomerleau氏は言う。
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