ネットのサービスは、主要なプラットフォーム技術を取り入れ、オープンソースコミュニティーとの関係を作り、事業を提供していくことが基本となっている。オープンソースを活用し、さまざまなマッシュアップを生かして低コストで競争力のあるサービスを生み出していくことは、Web 2.0時代を迎えたネット企業の今後の課題でもある。
New Industry Leaders Summit(NILS)では、これまであまり取り上げられなかったテクノロジ、インフラをテーマの軸とした「Web 2.0 サービス開発の潮流」についてのセッションが開催された。
このセッションに登壇したのは、Web 2.0サービスを提供している企業としてグリー 取締役最高技術責任者 藤本真樹氏、SkypeのAPIを提供しているSkype Technologies 日本ビジネス担当 兼 技術責任者 岩田真一氏、プラットフォームベンダーのAdobe Systems Director of Emerging Market Investments 田中章雄氏。また、モデレーターはメディア関連のブロガーとして有名で、CNET Japanブログ「渡辺聡・情報化社会の航海図 」の著者でもある渡辺聡事務所 代表 渡辺聡氏が務めた。
Web 2.0的なサービスを提供していくには、テクノロジーを理解た上でプラットフォームの採用を考えていかなければならない。グリーの藤本氏は、サービスを開発する上でオープンソースを無視できないテクノロジーとし、Web 2.0でどのように扱っていくかを語った。
藤本氏は全社員50名のうちの35〜40名がエンジニアという会社、Zimbraを例に挙げ、米国では開発に注力している会社が台頭してきているが、日本ではまだこのような文化が根付いていないことを指摘した。今後、Zimbraのような企業が日本に増え始め、「開発重視にシフトしていくことがWeb 2.0的な流れではないか」と述べた。
ウェブサービスを開発するためには、プラットフォームが非常に重要になってくる。昨今ではウェブサービスの上に更にサービスを乗せた商品が登場する。ネットウェア的なアプリケーションを開発していくと、面白ければ1〜2日で模倣したサービスが出てくる。それについて藤本氏は技術を理解して採用し、それを独自のものとすることで勝ち得ることができるという。
「競争優位とはいっても、一方では下のレイヤーに来ると、なかなか真似ができなくなります。Googleの場合は下層のファイルシステムから、丸々一式独自のものを作りこんでいて開発プラットフォームのテールは圧倒的に有利になっていると思います」(藤本氏)
また、コミュニケーションやコラボレーションの仕組みをうまく作っていくことが、開発に関する競争力を高めることにつながる。ソフトウェア、オープンソース、広い意味でAPIの公開も、コミュニティを作り出していくという点では、開発者のグループを作っていくことにもなる。
「うまく自分達のプラットフォームを開発しながら、そこに多くの会社を載せていくこと。それが勝ちにいくということになると思います」(藤本氏)
「プラットフォームの選択では、事業リスクが基本的に変わってくる」とも、モデレーターの渡辺氏が指摘した。たとえば、WindowsかLinux、どちらを選択するかでリスクも仕事の仕方もすべて変わってしまう。そういうリスクについて、オープンソースを使ってどう確保していくのかが課題となってくる。
ユーザー数が1億人に達したSkypeは、エコシステム戦略として、バージョン1のリリースと同時にAPI化した。エコシステムのプラットフォームとしてSkypeAPIを提供している。そして、Skypeが用意したテスト、スペックをクリアした製品にロゴを付けている。
「ロゴを付けることがエンジニア達のモチベーションアップになっているようです。昔はカンパニー製品といいましたが、Skypeはサードパーティー製品によって支えられているところがあります。開発者にAPIを使っていただくことが非常に大きなポイントになってきています」(岩田氏)
また、デベロッパーが増えればコントロールが難しくなってくる面がある。その点を解消すべく、Skypeの岩田氏は開発者コミュニティ「Skype・パートナーズ・コミュニティ・ジャパン」を立ち上げた。ビジネス志向の会社で、Skypeを企業で利用する場合にどのような問題があるかなど、さまざまな情報交換の場となっている。
「現在、世界に約3000人のデベロッパーがいますが、ある程度人数が増えてくると、Skypeは何を返してくれるのかという話が出てきます。Skypeからお金を出させるのではなく、Skypeをプラットフォームとしてビジネスを行ってくださいと答えています」(岩田氏)
Web 2.0を考える上での投資戦略として、今後デスクトップソフトウェアやパッケージソフトウェア以外にどう伸ばしていくべきか、Adobeの田中氏はさまざまな投資活動、投資調査を行っている。
最近のウェブサービスの流れは、グローバルランキングトップ10の半分がアジア系になってきている。これまではポータルがトップにいたが、そこへWeb 2.0的な会社が入ってきている。
「日本はどうかというと、ミクシィがGoogleに次いでナンバー3に入りました。楽天もgooを抜き、今、Web 2.0系の企業は非常に力を持ってきているのを実感しています」(田中氏)
田中氏は、このように力を持つ企業になるために必要な要素が、大きく分けて3つあるとしている。その3つとは、テクノロジープラットフォーム、ソーシャルプラットフォーム、課金プラットフォームだ。
「Web 2.0系の会社を訪問するとき、必ずこの3つの要素について質問します。1つも答えられない会社は、投資的にも非常に難しいと思います」(田中氏)
この3つの要素をどうつなげるかによって、有望な企業が見えてくると田中氏はいう。Web 2.0サービスの潮流に乗るには、テクノロジー、コミュニティ、課金の仕組みについて明確にしていくことが鍵となっていくようだ。
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