さて、本製品最大のポイントとなる、画質と音質について見ていこう。画質については、ひとことで言うならば、携帯端末用に縮小した動画か、それ以下のレベルである。ブロックノイズはそれほどでもないのだが、コマ落ちの多さが目立ち、動きのある画面ではよく固まってしまう。野球中継でいうと、ピッチャーの投球フォームがワインドアップからリリースまで4コマ程度しか表示されない。打者のスイングに至っては2コマあるかどうかだ。
もともとSkypeのビデオ機能はウェブチャットに特化されており、画面全体がつねに書き換わるような映像を想定していないため、コマ落ちが発生するのも当然だろう。メインPCのスペック、あとネットワーク環境にも依存するだろうが、スポーツ中継など動きが激しい番組は、ギリギリ雰囲気をつかめる程度だと割り切っておいたほうがいい。
一方、動きが少ないニュース番組や、紀行・ドキュメンタリー番組はそれなりに快適に視聴が行えた。音声はまれに遅延することもあったが、聞き取りはしっかりと行えるので、ニュース番組の内容はじゅうぶんに理解できる。つまり、音声がメインとなるような番組であれば、十分に視聴に耐えうると思われる。
これらの状況を踏まえ、ユーザーが画質・音声のどちらを優先するかを選ぶ設定メニューがあるとよいのだが、Skypeの仕様上、そのようなメニューはない。メインPCの処理能力とネットワーク回線ですべてが決まってしまう。コマ落ちを少しでも改善したければ、メインPCの常駐アプリケーションを終了させ、少しでも負荷を軽くするのが現実的な解だ。
筆者が実験に使用したPCはPentium4 2.8GHz、メモリ2Gバイトだが、本製品での通信中はCPU利用率がほぼ100%に近い状態であった。クロック数自体は高くないとはいえ、Pentium4にしてこの状態である。ロースペックのパソコンを本製品と組み合わせてTV視聴用に利用するのは、事実上不可能だと考えたほうがいい。
ちなみに、本製品で受信したTV映像は、メインPC側で鑑賞することも可能だ。これにはメーカー提供がウェブ上で公開しているソフトウェアを用いる(※7月18日現在は未公開)。ノンサポートではあるが、これがあればTVチューナー単体として使えるため、活用の幅がさらに広がる。
画質・コマ数の制限についてはSkypeの制限によるところが大きく、たとえばワンセグなど、外出先でテレビを見るためのソリューションをすでに所有しているのであれば、本製品を比較対象として見るのは酷だ。環境に依存するとはいえ、動きは完全にコマ送り状態になってしまうので、あくまで雰囲気を楽しむことが目的である場合でないと使えない。
また、メインPCをつねに電源が入れた状態にしておかなくてはいけない点もマイナスだ。本格的に運用するのであれば、Wake on LANでパソコン本体を遠隔地からリモート起動させることも視野に入れる必要がある。
ただ、設定・導入の容易さや、ルータなど中継機器の設定変更が不要なこと、さらにハードとの相性問題の可能性が低い点など、メリットは少なくない。そもそも、TVチューナーつきで1万円を切る価格設定を実現しており、コストパフォーマンスは抜群だ。現在市場に出回っている“ロケフリ”的なソリューションの中では、もっともリーズナブルな製品であることに間違いないだろう。要は、コマ落ちをどう評価するかということになる。
前述の視聴ソフトがあれば、単純にTVチューナーとしても使え、活用範囲がさらに広がる。これを含め、TVチューナーの入門機として購入するのは、決して悪い選択ではないだろう。
GOTO'S CHOICE!
価格 | ★★★★★ 1万円を切る低価格。問題はむしろ電気代か |
---|---|
ユニークさ | ★★★★★ Skypeを利用するという発想が秀逸 |
設定しやすさ | ★★★★☆ 音声設定がやや難しい以外は問題なし |
取り回し | ★★★★★ USBスティックタイプで取り回し抜群 |
画質 | ★★★☆☆ コマ落ちが多く、あくまで内容を確認するレベル |
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