最大の敵はポータルサイト--韓国版YouTube「パンドラTV」の挑戦

佐々木 朋美2006年07月14日 03時08分

 韓国では7月4日に韓国版YouTube「パンドラTV」の運営会社であるパンドラTVが、米国のシリコンバレーにあるベンチャーキャピタルAltos Venturesが主催する「ベンチャーキャピタルコンソーシアム」から60億ウォンの投資を受けることになったと報道され、注目を集めた。パンドラTVはこの資金により「モバイルパンドラTV」の構築と海外進出に注力する計画でいる。

 まず、パンドラTVという会社を紹介しよう。パンドラTVは、日本にも進出している韓国の代表的な動画ポータルサイトだ。You Tubeのようにユーザーが直接撮影・編集した動画を無料かつ容量無制限でアップロード可能なほか、ロイターなどと提携した最新ニュース映像や、各企業が対価を支払って提供する広告映像なども流している。

 またユニークな特化サービスもあり、MSNメッセンジャーにパンドラTVを友達として登録すると、MSNメッセンジャーの会話入力欄で直接動画検索などが可能となる「Pan PD」サービスが提供されている。

 このパンドラTVがベンチャーキャピタルコンソーシアムから可能性を見出され、資金調達にこぎつけた。この資金力をもってパンドラTVが、今後最も注力しようとしているサービスの1つが「モバイルパンドラTV」である。

 「モバイルパンドラTV」とは、外出先からでもユーザーが直接撮影した動画を転送できるなど、モバイル端末と連携したサービスだ。Mobile WiMAX規格であるWiBroや、韓国のデジタル放送規格であるDMB(Digital Multimedia Broadcasting)など、多様なインフラと連携したモバイルサービスが提供される予定だ。

パンドラTVの本当の狙い

 実はこの投資誘致によるパンドラTVの本当の狙いは、動画ポータル企業同士の結束にある。パンドラTVでは動画サービス市場においてポータルサイトと対等に張り合えるよう、60億ウォンのうちの10億ウォンを、動画ポータル企業が共同参加して作る統合検索データベース(DB)の構築に充てる案を検討中だ。パンドラTVや他の業者たちが持っているコンテンツDBを統合し、これを共同利用できるようにするのである。これにより、コンテンツ数を物理的に増やすことができる。

 動画ポータル同士が手を組み合う理由は何か。実は動画専門ポータルにとって最大の敵はポータルサイトなのである。コミュニティサービスを基盤にしたポータルサイトが、本格的に独自の動画プラットフォームを構築してマーケティングを開始した場合、利用者数ではとても勝負にならないからだ。「代表的な動画ポータル」とはいえ、パンドラTVの月のページビューは約2億7000万。これはNaverの1日のページビュー(約7億)の半分にも満たない数だ。しかも多くのユーザーは、まずポータルサイトの動画検索を利用してから動画ポータルを訪問することが多い。

 国産ポータルサイトが絶大な市場占有率とブランド力を誇っている韓国では、NaverDaumなどのポータルサイトが動画サービス市場までをも掌握しようとしている。

 人気のコミュニティサービスなどで早くから多くの固定ユーザーを抱えているポータルサイトでは、これとの連動機能などを持った独自の動画サービスを開設。既存のユーザーをそのまま動画サービスへも誘致しようとしている。一方総合的なサービスではなく、動画のみで勝負する動画ポータルも、これらに対抗していく必要がある。そのためパンドラTVは共同DBを設け、束になってポータルサイトに挑もうとしているのだ。

 ポータルサイト側では、ユーザーが自社の動画サービスに留まるような工夫をし始めている。こうした状況にパンドラTVでは大いに危機感を感じており、それへの対抗策として動画ポータル同士の結束を提案しているのだ。

 パンドラTV以外に韓国で人気の動画ポータルといえば、NOWCOM「afreeca」や、UMCの「mgoon」など数カ所の競合サイトが挙げられるが、これらとの競争もまた激しい中で思い切った方針ではある。しかしポータルサイトという"巨人"に挑むにはこれほどの戦略が必要なのだろう。

 かくいう日本でも、ポータルサイトの「Yahoo! JAPAN」と、動画ポータル「GyaO」の対決構造が浮き彫りとなっている。コンテンツ確保に心血を注ぐ彼らが生き残るため、結束・協力の道はありえるのだろうか。

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