本製品の説明の前に、まず「S.M.A.R.T.」という技術について簡単に説明しておこう。「S.M.A.R.T.」とは、Self-Monitoring Analysis and Reporting Technology の略語で、HDDそのものが持っている自己診断機能のことだ。読み込みエラーが発生した回数やクラスタの破損状況、ドライブの温度といった多くの属性について、HDD自身がステータスを取得する機能だ。現在市販されているHDDのほとんどがこの「S.M.A.R.T.」に対応している。
S.M.A.R.T.の属性読込エラーレート |
スピンアップタイム |
スタート/ストップカウント |
再配置セクタカウント |
読込チャネルマージン |
シークエラーレート |
パワーオン時間 |
スピンリトライカウント |
温度 |
今回紹介する「SmartHDD」は、この「S.M.A.R.T.」技術を利用し、HDDの総合的な診断を行ってくれるソフトだ。「S.M.A.R.T.」によって得られた情報を多角的に分析し、利用中のHDDの健康状況や、故障予測日を通知してくれるというものだ。スキャンディスクやデフラグなどとはまったく異なり、ハードウェアそのものの寿命を診断するソフトである。
本製品を利用することにより、日常の挙動だけではなかなか判断できないHDDのステータスを客観的に判断でき、故障予測日も通知してくれるため、劣化したHDDをクラッシュする前に交換するといった対策が可能になり、結果的に重要データの損失を回避することができる。また、中古パソコンを購入する場合など「SmartHDD」による診断結果が付与されていれば、製品の価値を判断するのに大いに役立つだろう。
では早速使ってみよう。インストールが完了するとタスクトレイに常駐し、HDDの監視が開始される。最小化したアイコンをマウスでポインタすると、簡単なステータスと現在のHDDの温度を表示してくれる。
メイン画面では、HDDの健康状態を「良好」「注意」「危険」の3段階で表示してくれる。ここで表示されるステータスは、単純にHDDの古さや、一時的なHDDの温度といった項目から判定されたものではなく、「S.M.A.R.T.」のさまざまな属性から総合的に判定された結果である。HDDがどれだけ新しくても、「S.M.A.R.T.」の属性値で大きな障害があれば「危険」と表示される場合もあるし、その逆も考えられる。
筆者のデスクトップパソコンに本製品をインストールしてみたところ、いきなりCドライブで「危険」のステータスが表示された。これは、明日にも壊れる可能性があるという診断結果である。該当のHDDは、まだ使い始めて半年程度しか経っていないのだが、当初から読み取りエラーが起こる頻度が高く、OSのフリーズで強制的に電源を落とすこともしばしばだった。単純にHDDを使い始めてからの日数で言えばまだまだ劣化していないはずだが、実はS.M.A.R.T.属性上はそうではなかった、という典型的な例である。
筆者がこれを受けて取った対策は、新規にHDDを購入してシステムをまるごと移行させ、危険と判定された従来のHDDはサブに回す、というものであった。入れ替え後の診断画面は以下の通り(03.JPG)であるが、さすがに健康状態の表示は「良好」になっている。ただしこの状態でも、温度がやや高いとの診断結果が示されている。自作機であるため、内部の放熱に無理があるレイアウトになっているのだろう。このように、パソコン自作派にとってもハードウェア構成を見直すのに役立つソフトだと言えそうだ。
なお、サブに変更した従来のHDDのステータスは依然「危険」のままだが、メインのドライブでなくなったためにアクセス頻度が減り、以前に比べて温度が低くなっている。それほど高い信頼性を求められない用途、たとえばテンポラリファイルの置き場所などの用途であれば、まだしばらく役立ってくれるだろう。このように、HDDの信頼性に応じた効率的な運用が可能になるのも、本製品のメリットのひとつだ。
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