開発途上国の子供たちに低価格のPCを提供するという「One Laptop Per Child(OLPC:すべての子どもにラップトップを)」の目標が、また一歩実現に近づこうとしている。
非営利団体のOLPCは今週、いわゆる「100ドルPC」のプロトタイプを披露している。OLPCが、実際のコンピュータ部品を積んだプロトタイプを発表するのは今回初めてだ。
OLPCのWalter Bender氏(ソフトウェアおよびコンテンツ担当責任者)は、CNET News.comにあてた電子メールのなかで、「これまでは、インダストリアルデザインとハードウェアが別々に公開されていた」と述べている。同氏によると、実際に稼働するこのプロトタイプはすべての機能を備えており、「われわれにとって、大きな節目といえる」ものだという。
OLPCの100ドルPCは、これまでにグリーンやブルー、イエローのプロトタイプが発表されているが、今回はさらに鮮やかなオレンジ色のものも登場している。ただし、これがそのまま実際の製品になるわけではない。このプロトタイプには800x480ピクセルの解像度を持つ液晶画面が搭載されているが、実際の製品には1200x900ピクセルの画面が採用されるとみられている。
OLPCは今週、マサチューセッツ州ケンブリッジで会合を開いたが、これには2007年前半に同団体が100ドルPCの投入を計画している世界各国からのタスクフォースも参加した。Linux OSを採用する100ドルPCは、各国政府による大規模な取り組みを通じてユーザーに提供されることになっており、個人に直接販売される予定はない。
OLPCのプロジェクトは、MITのMedia Labを設立したNicholas Negroponte氏が2005年に発表したものだが、同プロジェクトではインドや中国、ブラジル、ナイジェリアといった国々の大勢の子供たちに、学習のためのツールとしてPCを提供することを目標に掲げている。ただし、開発途上国向けの低価格PC提供をねらっているのはOLPCだけではない。チップメーカーのIntelやAdvanced Micro Devices(AMD)、そしてソフトウェア最大手のMicrosoftでも同様のシステムの開発が進んでいる。
OLPCのウェブサイトではこの週末に、100ドルPCについてのその他の詳細も明らかにされている。たとえば、LinuxベンダーのRed Hatから参加しているチームは、OSのサイズを400Mバイトから250Mバイト程度まで小さくすることに成功した。「まだ簡単に削れる部分が残っている。使わないビットマップフォント(7Mバイト)、Xフォントサーバ(1Mバイト)、Perl(30Mバイト)などだ」(同サイト)
Negroponte氏は先月、「Linuxのサイズが大きくなり過ぎた」ために、このことが「小さくて動作の軽快なシステムを実現する上での障害になっている」と不満を漏らしていた。
Bender氏によると、現在公開中のマシンにはFedora Core 5.0が採用されているという。
また、アルファ版のテスト(A-Test)用マザーボードの最初の15枚は、すでに組み立てとテストが完了しており、6月中旬までには開発者向けのマザーボードが大量に出荷されるとみられている。なお、100PCの製造には、台湾のODM(Original Design Manufacture)メーカーQuantaがあたることになっている。
この100ドルPCはハードディスクを搭載せず、また無線で他のマシンと接続するようになっている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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