総合電機大手の前期2006年3月期の決算と今期2007年3月期の業績見通しが出揃った。その中で株式市場から改めて“勝ち組”の評価を受けて株価面でも良好の評価を受けているのが東芝だ。2006年3月期の連結純利益が前の期に比べて70%増と好調な決算となった。東芝の業績動向と今後の株価動向について探った。
東芝が4月28日に発表した2006年3月期の連結決算(米国会計基準)は、売上高6兆3435億円(前期比9%増)、営業利益2406億円(同55%増)、税引き前利益1782億円(同60%増)、純利益781億円(同70%増)となった。デジタルプロダクツ部門では、パソコンとテレビの収益状況が厳しかったものの、HDD(ハードディスク・ドライブ)の増収効果と携帯電話の売上前期比約50%増、などが大きく寄与した。
さらに、社会インフラ部門では、コンピューター断層撮影装置など医用システム事業の利益拡大も貢献した。電子デバイス部門では、液晶事業での採算悪化があったものの、NAND型フラッシュメモリー(電気的に一括消去・再書き込み可能なメモリー)半導体事業の高い伸びがこれをカバーした。
この結果、全セグメントで増収増益となり、家電部門も黒字化、会見では「それなりにいいパフォーマンスを出せた」(笠貞純代表執行役副社長)と自ら評価する場面もみられた。さらに、財務体質も引き続き改善をみせており、2006年3月期末の有利子負債は9175億円と2005年3月期末の1兆1114億円から2000億円近くの減少をみせた。
今期2007年3月期の目標は、売上高6兆6000億円(前期比4%増)、営業利益110%の2650億円(同10%増)、税引き前利益2200億円(同23%増)、純利益900億円(同15%増)と予想している。
今期の事業部門別の連結営業利益の前期と比較した増減予想を見ると、デジタルプロダクツ部門141億円増、電子デバイス部門317億円増、家電部門23億円増、社会インフラ部門165億円減と見込んでいる。この中で注目すべきは電子デバイス部門で、主力商品のNAND型フラッシュメモリーについては年率で前の期に比べて40%もの価格下落を見込んでいるものの、需要が非常に旺盛なことから数量面での増加に期待し、営業利益についても増加を見込んでいる。野村証券はこうした好決算の発表を受けて「好調な業績を確認できる内容」として東芝株の投資判断を「3」から「2」に引き上げている。
東芝の今年に入ってからの株価推移をたどると、年初急騰をみせ1月13日に年初来高値の815円をつけ、その後下落トレンドをたどり3月8日には612円まで下落。その後、いったん4月7日に755円まで戻し微調整後、今回の好決算を受けて、5月2日には戻り高値を抜いて一時764円まで買い上げられる展開となっている。
当面は800円を超えた水準から予想される戻り待ちの売りをこなしながら、年初来高値の815円にトライする展開が続きそうだ。ただ、信用取引の買い残高も高水準に達していることから一本調子での株価上昇の可能性は少ないと判断せざるを得ない。株価が1000円を超えてくるのは、早くても9月中間決算の輪郭が見えてくる夏以降となりそうだ。
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