4月28日の株式市場では、ソニーの株価が一時、前日比370円安の5660円まで売り込まれ、終値でも同310円安の5720円と急落した。前日の4月27日引け後に同社が発表した前期2006年3月期の連結決算(米国会計基準)と、今期2007年3月期の連結業績見通し(同)に対する評価だ。
証券各社の調査機関からは、「会社側の今期の業績見通しは保守的過ぎる。上方修正の可能性が高い」との同情的な内容のアナリストリポートが出されたものの、市場の評価は厳しいものとなった。外国証券の電機担当のアナリストからは「決算や業績見通しの数値自体よりも、ソニーの経営陣が自社の業績の方向性を本当に的確に把握できているのかどうかという不信感を投資家に抱かせる内容といわざるを得ず、信頼の回復には程遠い」との見方が出ていた。
ソニーが27日の発表した2006年3月期の連結決算は、売上高7兆4754億円(前々期比4%増)、営業利益1913億円(同68%増)、純利益1236億円(同24%減)となった。なかでも営業利益は、会社側の従来予想1000億円のほぼ2倍と大幅な伸びをみせた。ただ、中核のエレクトロニクス事業は3期連続の営業赤字(前々期343の赤字、前期309億円の赤字)となり、昨年投入した液晶テレビ「ブラビア」の好調で何とか赤字幅の拡大を食い止めたかたちだ。
2006年3月期決算の営業利益1913億円のうち、大半を占める1883億円を稼ぎ出したのは金融部門で、ソニー生命が資産運用で保有する株式や転換社債などの有価証券の評価額が、株式相場の上昇を背景に膨らみ、多額の評価益を計上したためだ。つまり、昨年8月以降の株式相場上昇に支えられた特殊要因によって幸運にも捻出できた営業利益ということになる。市場関係者からは「液晶テレビのブラビアの好調といった情報に踊らされて好決算を期待し、4月半ばの5500円台から6200円(4月21日高値)までソニーを急ピッチで買い上がった投資家を完全に裏切る決算となった」との厳しい見方も出ている。
そして、なによりも投資家の失望を呼んだのは2007年3月期の連結営業利益について、前期比48%減の1000億円とほぼ半減すると予想したことだ。これまで、液晶テレビ部門での遅れを取り戻すために多額の投資負担を強いられてきたエレクトロニクス事業については今期ようやく通期で100億円程度の小幅黒字に転換することを予想しているものの、今期はゲーム事業で「プレイステーション(PS)3」の本格立ち上げに伴う多額のコスト計上により、約1000億円の赤字計上を見込んでいるというのだ。
さらに、デジタルカメラ用や高性能MPU(超小型演算処理装置)などを含めた半導体向けの設備投資額が、前期の1400億円からさらに20%以上も増加する1700億円という高水準になることも利益を大きく圧迫することになる。
証券会社の調査機関の中には、今期のエレクトロニクス部門の黒字幅の上方修正期待や、映画事業での「ダ・ヴィンチ・コード」のヒット期待、半導体事業での損益の改善などを見込んで営業利益の上方修正を期待する向きもある。ただ、会社側の示した業績見通しの根拠では、3年先、5年先のソニーの将来像やそれに向けての成長シナリオを描くことは困難といわざるを得ない。
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