こうした機能が実現されると、たとえば作家が話に複数の結末を用意したり、あるいは絵を動かしたりや登場人物に喋らせることもできるようになると、Newby氏は言う。「これは、ごくふつうの紙の本と比べて非常に面白いものになるだろう。人々はオンラインにあるインタラクティブなコンテンツを好んでいる。それを本に取り入れない手はない」(Newby氏)
Ebraryの販売マーケティング担当バイスプレジデントを務めるDavid Bass氏も、同じようなビジョンを抱いている。同社は学術機関や公共図書館、企業図書館に電子書籍を販売している。
将来、電子書籍用の端末は「デバイス指向ではなく、経験指向となるだろう。それは本以上のものになる必要がある」とBass氏は言う。「1999年から2000年にかけて登場した電子書籍が失敗に終わった原因はそこにある。つまり、印刷されたテキスト以上のものを提供できなかったということだ」(Bass氏)
また電子書籍端末は、iPodやPDA、スマートフォンといった他の携帯端末との激しい競争に直面している。他の端末では、テキストを表示する以上のことができると、調査コンサルティング会社Shore Communicationsのシニアアナリストを務めるJean Bedord氏は述べている。
「電子機器を使った読書は定着していくだろう。ただし、(複数の機能を提供する)ハンドヘルド端末上で読むのが多数派になると思う」とBedord氏は述べている。GoogleやYahoo、Amazon.comなどがブックスキャニングプロジェクトを進めており、書籍のタイトルや内容を簡単に検索できるようにすると約束している点を考えると、そうなる可能性はなおさら高いと、同氏は述べている。
現在、学術関連などのニッチ分野では、一般向けの市場に比べて、電子書籍の成長が著しいと専門家らは述べている。また全米の公共図書館でも電子書籍の普及が進んでおり、利用者カードを持つ者なら誰でも無償でダウンロードできるようになっている。
EbraryのBass氏によると、同社が電子書籍を販売する法人顧客の数は昨年400件から900件へ増加し、また利用者の数も倍増して約600万人になったという。
「消費者は飛行機に乗ったりビーチに出かけたりするときに、ぺーバーバックやハードカバーを持って行くのが本当に好きだ。それに対して、学生や教授らは日がな一日コンピュータの前に座り続けている」(Bass氏)
米国にある約100大学のキャンパスでは、学生がノートPCで使う教科書の電子版を選べるようにしているが、これは紙の教科書にくらべて25〜35%も安いと、OverdriveのPotash氏は言う。同氏はInternational Digital Publishing Forumの会長も務める人物だ。「米国では歯学部の学生の3分の1が、全カリキュラムの教科書を入れたノートPCに入れて持ち歩いている」(Potash氏)
しかし、Potash氏でさえ、電子書籍の市場が本格的に立ち上がるには、そのユーザーエクスペリエンスが変わる必要があると述べている。
「われわれはふたたび期待値を抑えようとしている。電子書籍片手にお風呂に入ったり、ビーチで寝そべるようになるには、まだ数年かかる」(Potash)
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