マイクロソフトの頭上に垂れ込めるWindows Vistaの暗雲 - (page 2)

文:Ina Fried(CNET News.com)
編集校正:坂和敏、尾本香里(編集部)
2006年03月27日 15時54分

 MicrosoftはVistaに関して、当初は基盤となるコードの部分に大きな変更を加えたいと考えていた。そのなかには「WinFS」という新しいファイルシステムやまったく新しい描画および通信関連の機能が含まれていた。だが、同社はその後Vista開発プロジェクトをさらに管理可能なものとするために、WinFSの搭載を全面的にあきらめ、ほかのアーキテクチャ関連の変更も規模を縮小した。

 Microsoftは将来の中間リリースで、OSの中核部分のコードではなく、Windowsの一部である付属プログラムをアップデートすることにより多くの労力を集中させることを検討するかもしれない。たとえば、Gates氏は20日に、Internet Explorerをもっと頻繁にアップデートする必要があると述べていた。

 だが、Cherry氏によると、現在求められているのは単なる別のアプローチ以上のものだという。

 MicrosoftはWindowsの新バージョンを設計する際に、変更や追加する機能についてより明確にしておく必要があると同氏は言う。また、特定の時間枠のなかで何が可能かを評価できるようになることも必要で、「スケジュールは何があっても守らなくてはならない」と同氏は指摘した。

 こうした厳しさがWindows部門にはこれまで欠けていたとCherry氏は言う。「彼らは、どんな機能でも気に入って(製品に搭載しようとして)しまう」(Cherry氏)

 この点に変化が起こるまでには、それほど時間はかからないかもしれない。Microsoftは先週、Office部門のトップを務めるSteven Sinofsky氏をWindows開発の新しい責任者に任命し、プラットフォーム製品、サービス事業を統括するKevin Johnson氏の指揮下に置いた。

 Ballmer氏は以前、すべての新しい製品アップデートが大型リリースであるような状態に終止符を打ちたいと明言していた。

 「すべての事業で、6〜9カ月ごとに出せるものや、2年ごとに出せるもの、さらに長い間隔で出せるものを確実に用意することが重要だ」と、同氏は2005年に行われたGartner ITカンファレンスで述べていた。

 しかし、MicrosoftはWindowsの各リリースごとにどの程度の変更を加えるかを判断するという難問に直面している。

 「もし変更が少なすぎれば、一般ユーザーは購入しなくてはならないという理由を見いだせない。また、もし変更が多過ぎると、たとえ(新しいソフトウェアを)出荷できたとしても、今度は企業顧客がそれを吸収しきれない」とSilver氏は言う。「Microsoftは、『何かをやっても、とやかく言われ、やらなくても、とやかく言われ』という状況に自社が置かれていることに気付いている」(Silver氏)

Windows Liveを視野に

 Microsoftは、OSや主要ソフトウェアを数カ月ごとにはアップデートできないこと、また多くの企業がそのようなことを望まないことを認識しており、そのためデスクトップ用ソフトウェアを強化したり刷新したりする方法として、「Office Live」や「Windows Live」のようなオンラインサービスにますます目を向け始めている。

 しかし、この手もある程度までしか通用しないとSilver氏は言う。

 「サービスは素晴らしいし、市場の一部には訴求するだろう。しかし、本当にWindowsの一部であるべきものもいくつかはある」(Silver氏)

 同氏によると、Microsoftには以前のアプローチ--つまり、ビジネスユーザー向けのバージョンと一般ユーザー向けのバージョンを別々に出すとやり方に戻すという選択肢もあるという。Microsoftがこの2つを一緒に出すようになったのはWindows XPからだ。

 「いずれ、Microsoftは一般ユーザー向けのリリースをもっと頻繁に出さなければならなくなるだろう」とSilver氏は言う。「また、企業向けのリリースはそれほど多くする必要はないが、予想が付きやすくする必要はある」(Silver氏)

 Bob Muglia氏が率いるWindows Server部門は、これまで4年ごとにメジャーリリースを、またその間に中間リリースを出すというスケジュールの実現に向けて作業を続けてきた。同社は3年前に「Windows Server 2003」をリリースし、また2005年には比較的控えめなアップグレードとなった「Windows Server 2003 R2」を出荷した。

 無論、Windows Serverグループの作業の進捗は中核OSの開発と切っても切れない関係にあるため、Windows開発のほうに生じた遅れが影響する可能性も高い。また、サーバ用OSのアップグレードには、クライアントOSの場合より長いテスト期間が必要なことも、これまでの経験から明らかになっている。

 Microsoftはサーバ版のLonghornを2007年にリリースする可能性が高く、Microsoftでもこちらの開発は予定通り進んでいると述べていた。

 なお、よろめく巨人の問題については、IBMはその後も非常に大きな勢力を保ち続けた。結局のところ、Ballmer氏がMicrosoftの一番の競争相手として挙げているのは依然として、IBMだ。

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