スタンフォード大学とカリフォルニア大学3校が、電源を入れるとすぐさまコンピュータが立ち上がることを可能にするかもしれない「スピントロニクス」技術を研究するための共同プロジェクトを開始した。
このプロジェクトは「Western Institute of Nanoelectronics(WIN)」と呼ばれ、事務局はメンバー大学4校のひとつであるカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)Henry Samueli School of Engineering and Applied Scienceに置かれる。科学的および技術的な作業はスタンフォード大学全体とカリフォルニア大学バークレー校および同サンタバーバラ校でも分散して行われる。
WINは4年にわたり支出される1820万ドルの寄付金により設立された。寄付金の多くはスピントロニクスの進展に期待を寄せる半導体企業から拠出されたものである。スピントロニクスは次世代の家電製品の消費電力を最小限に抑えることを約束している。チップメーカーのIntelはこのプロジェクトに200万ドルを寄付するとともに、機器に1000万ドルを投じている。IBMやTexas Instruments、Advanced Micro Devices、Intelなどが資金を拠出する「Nanoelectronics Research Initiative」からは238万ドルが提供された。
WINは、参加大学が同プロジェクトに関わるインフラと人件費に4年間で2億ドル以上を支出すると予想している。
研究者らは今後数年でチップメーカーが「ムーアの法則」の壁に突き当たることになりそうであるとみている。これによりチップ設計者らはチップの小型化により性能を向上させることを阻まれることになりそうである。チップは30年以上にわたり、コンピュータ処理能力の急激な成長を推進した原動力であった。
「簡単にいえば、今日のCMOSデバイスは、これ以上小型化しても適切かつ効率的に動作することができなくなる。そこでスピントロニクスの出番となる」とUCLA工学部教授のKang Wang氏は述べている。Wang氏は今回のプロジェクトのディレクターを務める。
スピントロニクスでは、電子のスピンを利用してデジタル情報を伝達する。データ処理技術はこれまでは、そして今後数年の間は、真空管や無数のトランジスタによるマイクロチップといった電荷ベースのデバイスに依存する。
従来の電子デバイスはこのような電荷を利用していたが、各電子に付随するスピンは無視してきた。スピントロニクスの研究は、これまで使用してこなかったスピンを利用することで、電子をひとつの滑らかな反応性の連鎖運動に変えることを意図したものである。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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