オンライン広告サイトのCraigslist、成功の秘密は「あくせくしないこと」

文:Marguerite Reardon(CNET News.com)
翻訳校正:坂和敏(編集部)
2006年02月03日 20時37分

 ニューヨーク発--オンライン広告サイトのCraigslistは、典型的なインターネット企業ではない。そして同社の最高経営責任者(CEO)Jim Buckmasterも、メディアの世界によくいるタイプの大立て者ではない。

 変化の激しいIT業界で、他社のCEOは売上の拡大に翻弄され、獲得した市場を必死で守ろうとしている。ところが、Buckmasterのやり方には収益増や競争へのこだわりが見られない。

 「心配で夜も眠れないといったことはない」。米国時間1日に当地で開催されたSoftware and Information Industry Association(SIIA)のイベントで講演したBuckmasterは、オンラインメディア企業の幹部らを前にそう語った。「過去12カ月間でアクセス数は約200%増えたが、たとえ。この増加率が100%に下がったとしても、世界の終わりがくるとは思わない」(Buckmaster)

 サンフランシスコ出身で黒のフリースのプルオーバーにジーンズといういでたちのBuckmasterは、Fortuneの技術担当編集者David Kirkpatrickによる公開インタビューに答え、Craigslistの成功の秘密について穏やかな口調で話をした。

 Craigslistは、住宅から仕事、出会い、野球のチケットまで、ありとあらゆる情報を求める利用者のために、必要最低限の機能を備えた案内広告サイトとして、1995年に同サービスを開始した。それ以来、Craigslistはバナー広告のないすっきりしたルック&フィールを維持しつつ、売り手と買い手を結びつけるオンラインネットワークへと発展した。

 それから11年後の今日、同サイトは米国内外の190都市でサービスを提供している。毎月1000万人のユニークユーザーを集め、30億ページのページビューを稼ぐCraigslistは、インターネット上で7番目にページビューの多い人気サイトとなっている。

 同サイトでは、一部の都市の求人情報にしか課金していないものの、新聞の求人/不動産広告や三行広告の売上に大きな打撃を与えており、その額は何百万ドルに達している。

 これほど成功しているにも関わらず、Buckmasterと同サイトの生みの親であるCraig Newmarkはまったく会社らしくないやり方を守っている。Newmarkはまだ社内におり、自分の役割を単なる顧客サポートと称している。

 同社は現在、サンフランシスコ、ロサンゼルス、ニューヨークで求人広告を出す広告主から料金を徴収しているだけだ。ただし、同社はこの求人欄の拡大を検討している。また、ニューヨークの不動産業者にも、賃貸物件の掲載に対して10ドルの手数料を請求する計画もある。

 Craigslistは、売上を最大化することにはあまり興味がないようだが、その割にはかなりの業績を上げている。Fortune誌の最近の記事によると、同社の昨年の売り上げは推定で約2000万ドルだったという。

 Craigslistの成功は各方面で注目を集めており、今後同社はGoogleやMicrosoft、News Corp.のMySpace.comなど、複数の企業との競争に直面することになるだろう。これらの企業はそれぞれ三行広告サイトの立ち上げを計画している。

 それでも、Buckmasterは競争の可能性にたじろぐ様子はなく、競合相手を阻むためによく使われる戦略を退ける。その一例として、同氏は同社株式の25%をすでに保有するeBayの株式保有比率を高めるとの噂を即座に否定した。

 Buckmasterによると、ある程度の成功を収めた後、増員のための追加資金調達先を探す他のインターネット企業とは異なり、Craigslistは小規模な体制を維持する可能性が高いという。同社にはわずか19人の社員しかおらず、その半数は技術スタッフだ。また、サイトのほぼ全体をオープンソースソフトウェアで構築しているため、コストを低く抑えることが可能だとBuckmasterは述べている。

 「大企業ほど売上を最大化することを重視する傾向があり、そのために大規模な営業部隊やビジネス開発部門が必要になる。われわれは大企業の真似をしようとは思っていないので、たくさんの人間は必要ない。一番いい戦略とは、ユーザーのニーズに応えることだけに注力し、ほかのことは気にしないことだ」(Buckmaster)

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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