「Where's Waldo?(ウォーリーをさがせ!)」に似た1ドル紙幣の動きを追跡するオンラインゲームをヒントに、ある科学者のチームが米国における伝染病の広がり方を予測する統計モデルを開発した。
UCSB(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)とMax Planck Institute for Dynamics and Self Organizationの研究者らは、「Where's George?」というウェブゲームを使いながら、人間に感染したウイルスの広まり方を予測した。「Where's George?」は、1ドル紙幣に付された番号を手がかりに地域ごとの紙幣の流通状況を監視するゲームだ。
この研究チームは、紙幣もウイルスと同じように、人から人へと移動するとの考えに基づいて今回の調査を行った。
UCSBのKavli Institute for Theoretical Physicsの研究者、Lars Hufnagelは「動物に付けるような追跡装置を人間に付けるわけにはいかないため、個人の膨大な活動を把握するためのデータが必要だった」と語っている。「そこで、1ドル紙幣を人間用のレーダー装置の代わりに使った」(Hufnagel)。同氏は今週号のNature誌に掲載された今回の調査に関する記事の執筆にも携わっている。
鳥インフルエンザやSARS(重症急性呼吸器症候群)が発生して以来、、世界中の人々が人類の脅威である「超悪性インフルエンザ」のことを。現代では、さまざまな交通の手段が発達しているため、ある地域で発生した病気が瞬く間に別の地域にまで広がってしまう。それに対し、人の移動が一般的に1日数キロメートル程度だった昔の伝染病は、各地における感染速度が遅かった。
国内あるいは国境をまたいで移動する人々の定量分析がないため、現時点では伝染病の感染経路を予測することは困難だ。Hufnagelがほかの2人の科学者と共同で行った調査は、交通手段の違いに関係なく人の移動を記録する統計モデル作りを目指しているが、1ドル紙幣の追跡では確証が得られない。
Hufnagelによると、研究グループの調査結果は驚くべきものだったという。紙幣は、普遍スケール則と呼ばれる単純な数学モデルにしたがって移動していたという。この場合は、地域内から、地域を越え、長距離移動までの動きがスケール則で説明されているが、これは生物学や物理学のシステムにも応用されているものだ。
研究グループでは、50万枚の紙幣の動きを追跡したデータを使いながら、スケール則に関する理論を構築した。この理論は、ほんの数キロから数千キロまで、さまざまな距離を移動する旅行者の観察結果を説明するもので、たとえばほとんどの紙幣は特定の地域のなかを循環しているが、なかには全国をめぐるものもごくわずかにあるという。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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