まずDSC-T9を手にして感じたことは、その質感の高さである。本体重量は134グラムと決して重いものではないが、そのメタルボディを手にすると安心感のある重みを感じさせてくれる。手のひらに包まれたその触感はあたかも職人が磨き上げた工芸品のようにも思える。また電源スイッチと連動するレンズバリアは手のひらのさりげない動きに追随しスライド開閉してくれる。その動きにも適度な応力が与えられており、その動きにハマると無意識にレンズバリアを開け閉めしてしまうくらいだ。例えるならばジッポライターの蓋を無意識に開け閉めしてしまう行為にも共通している。DSC-T9の外観もその質感を余すところなく表現している。シンプルだが決して無機質ではないそのデザイン。純粋色なシルバーが清潔感をも感じさせる。約9センチx5.5センチのカードサイズに2センチを切る薄さ。このままジャケットの内ポケットに忍ばせてもまったく違和感がない。このサイズに3倍の光学ズームが内蔵されているというのは驚きである。このように薄型コンパクトなカメラの場合、撮影する際にはその小ささから持ちにくくしっかりとホールドできない場合があるのだが、このDSC-T9はそのようなこともない。撮影時にはスライドされ開かれているレンズバリアが僅かながらラウンドしており、一見飾りのようにも見える金属モールには指がうまくかかるような突起も成形されている。また裏面の右手親指がかかる部分にはストラップ座金がうまく配置されており絶妙なグリップとしても機能しているのだ。このようにコンパクトを重視するだけでなくカメラとしての基本的な造形にもこだわり、かつ機能美以上のデザインを産み出せるところは、やはりソニーというメーカーの成せるところであろう。
このコンパクト薄型のボディに3倍光学ズームを搭載できたのは「折り曲げレンズ機構」を採用したおかげだ。この機構のおかげで従来ならばレンズ鏡筒をボディから延ばさなければ成らなかったズーム機構をボディ内にて完結できる。6.33〜19.0mm(35mmフィルム換算38〜114mm)と実用的には十分なズーム域での撮影が実にスマートに行えるのだ。また、このボディ内のレンズ機構のなかに手ブレ補正機構も組み込まれている。スマートな外観からは伺い知れぬ複雑なメカがこのDSC-T9には搭載されているのだ。
DSC-T9はTシリーズでは初の記録有効画素数600万画素デジカメとなる。搭載レンズはカールツァイス「バリオテッサー」。また撮影データをJPEG現像する前のRAWデータの段階でノイズをカットするという「クリアRAW NR」も搭載されている。こう聞くとその画像にも期待しないわけにはいかない。そこでさまざまな被写体を実際に撮影してみた。参考にしてもらえると嬉しい。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」