Windows Vistaでは、ユーザーがメタデータを使ってファイルにタグ付けできるようになることから、PCの検索機能が向上することになっている。だが、これらのタグが原因で望ましくない情報が開示されてしまう可能性があると、Gartnerのアナリストらが警告している。
Windows XPの後継OSにあたるVistaは、2006年後半に出荷が予定されているが、検索や情報整理の機能はVistaの大きな特長だ。Vistaでは、ユーザーがメタデータをファイルに付加できるようになることで、PC上にあるデータの検索や整理が容易になるが、Microsoftはこれらの機能を開発するにあたり、メタデータの管理に十分な注意を払っていないと、Gartnerは述べている。
同社アナリストのMichael SilverとNeil MacDonaldは、「これにより、不注意から社内外のユーザーにメタデータが開示されてしまう可能性が生じる」と米国時間22日に公開した調査メモに記している。
たとえば、あるユーザーが契約書のファイルに「優良顧客」や「注意が必要な顧客」といったキーワードを付すことが考えられるが、このような契約書をキーワードを付けたまま顧客に送付してしまうと、困惑する事態になったり、最悪の場合にはビジネスの機会を失うことになったりしかねないと、Gartnerのアナリストらは記している。
MicrosoftはWindows Vistaに簡単なメタデータ削除ツールを添付するが、Gartnerによるとそれだけでは不十分だという。Silverはインタビューのなかで、「メタデータの削除をユーザーに任せれば、その多くがチェックをすり抜けてしまうことは避けられない。完全な自動化が必要だ」と語った。
MicrosoftのMichael Burk(Windows Vista製品マネージャ)は、この点に関し、同社ではユーザーのプライバシーやセキュリティの問題に配慮していると語った。「Microsoftは顧客の意見に耳を傾けた結果、システム全体にわたってメタデータを利用し、ユーザーのプライバシーを保護しながら、彼らがファイルを管理/検索できる画期的な方法を実装しようとしている」と、Burkは声明のなかで述べている。
企業や政府機関でメタデータが不用意に公開されてしまい、当事者が困った立場に立たされたことは過去にも何度かあった。たとえば、Wordドキュメントでは変更作業を追跡するためにメタデータが利用されているが、昨年にはLinuxと敵対するThe SCO Groupが失態を演じ、同社が訴訟提起を検討していた企業の名前が明らかになってしまった。
最近では、大手医薬品メーカーのMerckがVioxx関連の書類を書き換えていたことが発覚し、窮地に追い込まれるというケースもあった。メタデータ削除ソフトウェアを開発するWorkshareのまとめによると、文書データの流出は、ホワイトハウス、米国防総省、国連など各所で発生しているという。
Silverによると、Windows Vistaではこれまでよりもメタデータが多用されることから、この問題はいっそう深刻になるという。「メタデータは長い間Windowsに欠けていたものだが、Microsoftはこれを強化しようとする代わりに、メタデータを割り当てるさらに別の方法を追加し、さらにそのことを忘れ、この問題を他の人間の手に委ねようとしている」(Silver)
Microsoftはメタデータを管理/保護するためのツールをWindows Vistaに組み込むべきだったが、実際にはそうしていないと、Gartnerのアナリストらは述べている。「Microsoftは、セキュリティやプライバシーの強化にいっそう力を入れているのだから、Windows Vistaの開発中にこの問題をOS内部の深い部分で解決するべきだった」(Gartnerのメモ)
企業は、Windows Vistaを採用する前に、メタデータの問題を解決するための計画と方針を定めるべきだと、Gartnerは述べている。重要な情報を扱う企業には、メタデータ管理用のサードパーティ製品を購入するという選択肢もあると、Gartnerのアナリストらは指摘する。「極端な場合には、この問題がきちんとした形で解決されるまでWindows Vistaの採用を延期するという選択も考えられる」(Gartnerのメモ)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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