「AJAX」など、インタラクティブなウェブアプリケーションを構築する洗練された開発技術の登場で、消費者向けウェブアプリケーションが急増している。
こうした技術により、かつては非現実的とされた取り組みまでもが息を吹き返し始めている。その取り組みとは、Microsoft Officeに取って代わるオンラインアプリケーションの開発だ。
「Google Maps」をはじめとする注目度の高いWebサービスが複数登場し、従来のウェブサイトよりはるかにすぐれたユーザーエクスペリエンスを提供するようになったことで、AJAX技術の認知度は向上した。いまでは、10社を超える新興企業がこの技術を用いて、ワープロソフトからプロジェクト管理ソフトウェアにいたるさまざまなデスクトップアプリケーションのオンラインバージョンを開発している。
ただし、「Web 2.0」とも呼ばれるこれらのウェブアプリケーションの多くは、Microsoft Officeを模倣してオンライン化しただけのものではなく、むしろインターネットを介した情報の公開/共有に重点を置いている。
その根幹を成すAJAX技術は、JavaScript言語やその他のウェブ標準技術を用いるもので、1990年代に考案された。
しかし、アナリストや起業家らによれば、AJAXという用語が作られた2005年2月頃までは、AJAXのもたらす新たな可能性を認識する開発者や企業はそれほど多くなかったという。
今年になってGoogleがAJAXを使用したアプリケーションを公開したせいもあり、ウェブアプリケーションがルック&フィールの点でも、既存のデスクトップアプリケーションに対抗できることが明確になった。また、複数のブラウザがウェブ標準をより広く採用したことで、開発者はAJAXアプリケーションを大半のPCで動かせるとある程度確信できるようになった。
Burton GroupのアナリストRichard Monson-Haefelは、「AJAXが登場した2005年前半に、これをサポートする企業が至る所で設立された。こうした新興企業は優秀な開発者を擁しており、(ツール)ベンダーによる制約に縛られることもないため、AJAXを駆使して思い通りの開発を進めていけるだろう」と述べている。
Macromediaの「Flash」や「Flex」のようなマルチメディアツールを用いて作成されたインタラクティブなウェブページは、数年前から一般に登場していた。こうしたいわゆる「リッチアプリケーション」と呼ばれるツール類は、複雑なタスクの処理に今後も使われ続けるだろうが、既存のウェブサイトにインタラクティブ性を持たせるといった単純な作業にはAJAXが適していると、Monson-Haefelは述べている。
すぐれたウェブサイトを構築できる技術が出現したことで、広告収入やサブスクリプション形式での利用料徴収でコストをまかなえるホステングサービス実現への道が拓かれた。1台のマシンごとにソフトウェアを購入するという、従来のデスクトップソフトウェアの販売モデルは、いま転換点にさしかかっている。
Microsoftは、デスクトップソフトウェアの分野で圧倒的な地位を築いているが、そんな同社でさえも遅まきながらウェブベースのアプリケーションサービスに積極的に取り組むようになった。
同社はソフトウェアサービスに関連した部門の組織改変を行い、11月にはMSN部門から派生した多数のサービスを提供する「Live.com」を立ち上げた。Hotmail(ここでは「Windows Live Mail」と呼ばれる)などの多くのLive.comサービスは、AJAXを用いて改良したフロントエンドを採用している。
AJAXを用いたOfficeが登場か
AJAXの人気が高まり、Microsoftもソフトウェアサービスに本腰を入れるようになったことで、Microsoft Officeに代わるウェブベースのアプリケーションに関する議論が高まりつつある。すでに複数の企業がオンライン版の生産性アプリケーションを開発しているが、現在は、そうした製品の根幹にウェブベースのコミュニケーションを位置づけようとする試みが行われているら。
たとえば、「Writely」はオンラインで提供されているワープロソフトだが、このシステムの価値は人々が簡単に共同作業をおこなえたり、ウェブページを共有できることのほうが大きいと、同社の共同創業者であるSam Schillaceはいう。Writelyでは現在4人の社員が働いている。
「Writelyをリリースしてから4〜5カ月間は、だれがブラウザでドキュメントを編集するものか、頭がおかしいのではないかと言われた。ところが今では、MicrosoftやGoogleがこれと同じことをしようとしている。つまり、われわれは6カ月の間に、頭のおかしな人間から普遍的な知恵を体現する存在へ昇格したことになる」(Schillace)
Googleが一部の従業員をオープンソースプロジェクト「OpenOffice」の開発に専念させると決定したことから、同社では生産性スイートのホスティングを行うつもりだという憶測が生まれている。
一方、MicrosoftはOfficeの完全なホスト版を提供する計画については何も公表していない。同社は11月に、小規模企業向けサービスの「Office Live」を提供し、ユーザーが顧客アカウントの動きを追ったり連絡先の管理を行えるようにすると発表した。だが同サービスは、Officeを補完するものであり、それに取って代わるものではない。Microsoftによれば、Office Liveは広告付きの無料版とサブスクリプション版の両方が提供されるという。
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