ThinkPadがユーザーから支持されている理由の1つに、キーボードの完成度の高さが挙げられる。ThinkPadはどのモデルも同じ配置の7列キーボードを採用しており、InsertキーとDeleteキー、PageUpキーとPageDownキーなどはデスクトップ用のキーボードと同じ配置になるような工夫もされている。
Zシリーズもキーボードは従来同様の7列配置だが、ThinkPad初となるWindowsキーが搭載された点に注目をしたい。スペースキーのサイズが小さくなってしまうために嫌われがちなWindowsキーだが、Windows+Eキーで「エクスプローラの起動」、Windows+Rキーで「ファイル名を指定して実行」ウィンドウの表示など、ホームポジションから指を離さずに操作できるようになった点は嬉しい改良と言えるだろう。なお、Windowsキーは今後発売されるThinkPadにも積極的に採用していくとのことだ。
また、Fnキーを押しながらカーソルキーを操作することでウィンドウズメディアプレーヤーの再生や停止ができる、いわゆるホットキーも今回のZシリーズから新たに採用された。
Zシリーズに採用されたキーボードは、ピッチ19.05mm、ストローク2.5mmと、十分な大きさとしっかりとしたキータッチで長時間の打鍵でも疲れにくい。
さらに、キートップに印刷されているフォントのデザインの変更や英数字のサイズを大きくするなど認識性を向上させたほか、コーヒーやコーラなどをキーにこぼした際の排出能力の向上、キーを支えるパンタグラフの改良による強度アップなど、今まで以上に完成度の高いキーボードとなっている。
従来のThinkPadは筐体にマザーボードやモジュール類を固定していたが、ThinkPad Zシリーズではマグネシウム合金製の内部補強シャーシ「ThinkPad Roll Cage」を新たに開発し、それらにマザーボードや各モジュールを装着する方式に変更された。
この改良により従来より本体の剛性が向上し、内部基板に対する外部からの圧迫負荷も軽減したという。都心の通勤電車では朝夕のラッシュ時はすし詰め状態となることも多いが、強度が高くなったZシリーズでは、通勤ラッシュで鞄が押されてノートPCが壊れてしまうのではないかという不安を抱えることもない。
また、HDDの保護機能も強化されている。HDD自体はゴム製のクッションでカバーし、HDDのコネクタ部には2次元の動きに対応する内蔵式のショックアブソーバーが装着された。さらに、従来機と同様に衝撃を予知してHDDを保護する「ハードディスク・アクティブプロテクション・システム」も搭載しているため、HDDの保護機能は格段に向上している。
従来からThinkPadには「Access IBM」と呼ばれるボタンが搭載されていた。このボタンを押すことで、あらかじめ作成しておいたバックアップデータを利用してPCの環境を復元したり、OSが起動しない場合に出荷状態へとリカバリーしたりすることができる。また、ThinkPadの使い方を調べるヘルプ機能やシステムの設定変更、ドライバーのアップデートを行う機能などを呼び出す機能も備えている。
ThinkPad Zシリーズでは、この「Access IBM」ボタンの名称が「ThinkVantage」へと変更になった。Winodwsの起動中にこのボタンを押すと、ユーティリティープログラムの「ThinkVantageプロダクティビティー・センター」が起動する。
従来と同様、ファイルのバックアップやリカバリーが行えるのはもちろん、新たに「バックグラウンド・プログラム・マネージャー」と呼ばれる機能が追加になった。これは、CPUの負荷を監視し、ユーザーがPCを利用していない時はウイルススキャンソフトやファイルバックアップソフトの優先度を上げ、キー入力などユーザーがPCを使用している時はそれらの優先度を下げるといった機能だ。ウィルススキャンの実行中はCPUパワーを消費するため、他のアプリケーションの動作もそれに引きずられて遅くなってしまうが、この機能を活用することでストレスなくThinkPadを活用することができる。
ThinkPad Z60tはモバイルノートとしての位置づけだが、重量は2.07キログラム、バッテリーでの駆動時間は2.5時間、ACアダプターは大きめのサイズであるなど、モバイルノートとして特筆に値する特徴はない。
しかしながら、試用してみると、モバイルノートとして細かいところまで十分に考えて設計されていることがよくわかる。まさに質実剛健という言葉がぴったり当てはまる製品で、これこそモバイルノートとして最も重要な点ではないだろうか。
ThinkPad Z60tは、ビジネスで活用するユーザーにはもちろん、初めてノートPCを購入するユーザーにもお勧めできる一台だ。
IBMからレノボへと変わってもThinkPadのクオリティーは不変だということがこの製品からもはっきりと受け取れ、従来からのThinkPadユーザーも安心して買い換えることができる製品に仕上がっていると言えるだろう。
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