最近は民主党と共和党の意見が一致することはほとんどない。
税金や貿易関連の法案、さらには国連や最高裁の問題まで、両党の議員たちは意見を違えてばかりで、見解が一致することは滅多にない。だが、このように両党の対立が激しさを増すばかりのように思えるなかで、少なくとも1点だけは所属政党の違いを越えて広い意見の一致が見られる。 それは「ブロードバンドが米国の未来にとって極めて重要になる」ということだ。
ブロードバンド、あるいは高速なインターネット接続回線は、世界中の人々の仕事や生活、遊び、学習にとって、ますます欠かせない存在になってきている。ブロードバンドのおかげで、ビジネスの生産性は向上し、公共サービスへのアクセスが容易になり、学生は宿題や下調べが楽にできるようになっている。そして、市民は、さかんに娯楽を楽しみ、地域の活動に参加し、さらに家庭生活にも積極的に関わるようになっている。
米国では現在、自宅にブロードバンドのアクセス環境を備える人間が1億2千万人を超えており、1月時点の1億300万人からかなりの伸びを示している。米連邦通信委員会(FCC)の報告によると、全米の各郵便番号地域のうち、最低1つの高速インターネットプロバイダが存在する地域は全体の95%に達しているという。それに加え、全米各地のカフェやホテル、空港、コミュニティセンターなどに合わせて数千カ所の「ホットスポット」ができている。両党の主要な議員と、積極的かつ有能なことで知られるFCCの新議長は、可能な限り早急に、国中どこからでもブロードバンドを利用できるようにするための取り組みを進めている。
このように書くと、米国ではブロードバンドが順調に普及しているようだが、実はそうでもない。世界各国のブロードバンド普及状況を比較した最新のレポートによると、国民1人あたりのブロードバンド接続性で、米国は12位であり、韓国(1位)、日本(8位)、アイスランド(4位)などのブロードバンド大国に大きく遅れをとっている。さらに、米国のブロードバンド接続速度は、世界各国の平均よりも遅い。このため、ブロードバンドによって実現されるはずの革新的変化が制限されてしまっている。
もっと心配なのは、米国人の34.5%がブロードバンドサービスに加入しているものの、残りの65.5%の人々はいまだにその恩恵に浴していないという点だ。ブロードバンドの敷設(供給)のほうが、利用者数(需要)を大幅に上回っているため、次世代ネットワークおよびサービスへの投資が頭打ちとなり、ブロードバンドが市民や社会に与えるプラス効果が出てこない状態になっている。
このようにブロードバンド加入者が少ない原因としては、プライバシーの保護やセキュリティへの懸念、仕事絡みのものを家庭に持ち込みたくないという心理、高齢者世代の無関心など、いくつかの要因が考えられるが、なかでも最も大きいのは多くの国民がブロードバンドの導入に価値を見いだしていないという点だ。これは単にコストの問題ではない。なぜなら、ブロードバンド接続サービスの料金は、平均すると、ケーブルテレビや衛星放送の受信料よりも安いからだ。無料で観られる地上波放送があるにもかかわらず、ケーブルテレビや衛星放送には、全米で9570万世帯が加入している。
ブロードバンドの普及速度をさらに加速させたい人々にとって、コンテンツの充実と新しいサービスはそのための「特効薬」といえる。この点で、IPTV(IP経由の映像配信)以上に見込みのありそうなコンテンツとサービスを提供している新しいサービスや技術はほかにない。IPTVは、(デジタルケーブルテレビのような)多彩な映像プログラムと双方向通信機能を持ち、利用者に非常に魅力的で他にはない経験を提供するものだ。
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