チュニス(チュニジア)発--当地で開催されている国連サミットにおいて、ブッシュ大統領政権とその批判勢力が世界的なインターネットの統治に関する包括的な合意に達し、今週中に劇的な結末が訪れる見込みがなくなった。
ブッシュ政権は、共同声明に署名することで、「Internet Governance Forum」の発足を正式に認めた。同フォーラムは、国連によって2006年に第1回目の会合がギリシャで開かれる予定で、コンピュータセキュリティからオンライン犯罪、スパム、「インターネットの乱用」に至るまで、さまざまな問題を世界的に議論していく中心的な役割を果たすという。
今回の合意では、米国に対し、インターネットの運用における唯一無二の影響力を放棄することは求められなかった。米国代表団を率いるDavid Gross大使は現地時間16日、本合意では「既存の枠組みに対する措置は一切取らない」ことになったと説明し、「(インターネットの管理に関わる)新たな国際組織は設立されなかった」と述べた。
サミット参加者が合意に達したのは、現地時間16日に世界情報社会サミット(World Summit on the Information Society)が始まるわずか数時間前のことだった。この合意で、将来のインターネット管理を巡る長年の摩擦がひとまず収束したことになる。中国、キューバ、南アフリカなどの国々は、米国やその他一部の裕福な国家に権力を集中させるべきでないとこれまで主張してきたが、こうした不満は今後、新たな国連フォーラムに引き継がれていく。
モザンビーク首相のLuisa Diogoは、チュニジアの首都に集まった大勢の使節団に向かって、「これは正義と道理に関する問題だ。インターネットの管理法についてはだれもが考えを持っている」と発言した。
ジンバブエ大統領Robert Mugabeは、さらに過激な警告を発している。米国やその同盟国である英国などは、正当な理由もなく「インターネットを管理する世界の警察になろうと主張」しているが、これは改めねばならないというのだ。
この問題の核心は、ネットワークが持つ歴史的な起源から、米国政府が「.com」や「.org」、国別コード「.uk」「.jp」などのトップレベルドメイン名のマスターリストを支配しているところにある。さらに、日々のインターネット運営を監督するためクリントン政権が設立した非営利組織ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)も、カリフォルニア州マリーナデルレイに本拠が置かれている。
ブッシュ政権は2005年6月、少なくともインターネットの安定性を象徴的に保証する役割については、放棄する意志がないことを明らかにしている。発表時の声明ではICANNの現行体制が支持されており、インターネットを不安定にする「いかなる行為」も取らないと述べられていた。
ブッシュ政権の使節団は、チュニジアサミットに至る一連の予備会談に出席するうちに、米国が孤立し始めていることを見て取った。
例えば欧州連合は、規制権限をも備えた強固な国連組織の創設を支持することを示唆した。だが、現地でのサミット公式開始時間が近づくと、米国に批判的だった中国などの国家は一連の指針に合意することを決め、新たな国連フォーラムに問題を委ねてしまった。
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