チュニス(チュニジア)発--約100ドルのゼンマイ駆動式ノートPCが、2006年後半には貧しい国の学校に通う子ども達の手に届くことになりそうだ。
MIT Media Lab理事長のNicholas Negroponteが、当地で開かれている国連のインターネットサミットで明らかにしたところによると、同氏の運営する非営利組織では現在メーカー各社と交渉を進めており、来年の2月もしくは3月までには最初の発注をかけることになるという。同氏のこのプロジェクトには、タイやブラジルなど6カ国の政府が最も強い関心を示していると同氏は語った。
今回初めて正式なデザインが披露されたこのマシンは、同プロジェクトのエンジニアMary Lou Jepsenが設計した低消費電力ディスプレイが搭載されており、ゼンマイを1分間回すと白黒モードで最大40分の表示が可能になる。
筐体の色はライムグリーンとイエロー系のコンビネーションで、学校でよく使う鉛筆を連想させる。この活動をとりまとめる非営利団体「One Laptop Per Child」を運営するNegroponteは、「この部分の判断が最も難しかった。明るいイメージを出したくてこのカラーを採用した」と語った。
国連事務総長のKofi Annanはこのイベントの幕開けに登場し、「これは本当に感動的な試みだ。また世界の団結と企業による社会貢献を示す感動的な表現でもある」と述べた。
このプロジェクトは、消費電力を最小限に抑えたワイヤレス機能搭載のノートPCを開発し、それを約100ドルで製造する意志のあるメーカーを探して、さらに各国政府に最低でも100万台の初期発注を行うよう説得し、学校に通う児童に配布する、というものだ(同プロジェクトでは2年間に数千万台を製造/配布するという目標を掲げている)。
しかし、各国政府との交渉は難航しており、Negroponteはこれを「非常に厳しい」と表現している。さらにマシンの見積価格も100ドルではなく、むしろ110ドルに近いままだ。「100ドルになると約束することさえできない。115ドルになる可能性もある。約束できるのは、いずれ価格が下がっていく、ということだけだ」(Negroponte)
もう1つの不安は、毎日の生活にも不自由する家庭の児童に無償で渡したラップトップが、その後どうなるかという点だ。たとえば、ナイジェリア人の平均年収は1000ドルであるため、金に困った家庭が付与されたノートPCを処分するといった懸念がある。
Negroponteは「とにかく絶対に流通市場を作らせないことだ」とし、そのための解決策の1つとして、「数日間ネットワークに接続しないとマシンが機能しなくなる」ような仕組みが考えられると説明した。
このマシンには、500MHzで動作するプロセッサ、1Gバイトのメモリ、そしてフルカラーと白黒の2つのモードを切り替えて使えるユニークなデュアルモードのディスプレイを搭載することが検討されている。なおフルカラーモードで使用する場合にどれくらいゼンマイを巻く必要があるのかはまだ明らかになっていない。
Negroponteによると、このマシンに使用されるオペレーティングシステムは、Apple ComputerやMicrosoftから出ているクローズドなものではなく、オープンソースのOS--おそらくはLinux--になると見られているという。なお、Google、Advanced Micro Devices、 News Corp.、Red Hatの各社はこのプロジェクトに寄付を行っている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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