Web 2.0:次世代ソフトウェアのデザインパターンとビジネスモデル(後編) - (page 2)

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4. ソフトウェア・リリースサイクルの終焉

 「Google対Netscape」の箇所でも述べた通り、インターネット時代のソフトウェアの決定的な特徴のひとつは、それがモノではなく、サービスとして提供される点にある。この事実は、企業のビジネスモデルに数々の根本的な変化をもたらす。

  1. オペレーションそのものがコアコンピタンスとなる。 GoogleやYahoo!の製品開発能力は、各社のオペレーション能力に比例するようになる。モノとしてのソフトウェアと、サービスとしてのソフトウェアはまったく異質のものだ。サービスとして提供されるソフトウェアは、日々の保守なしには正しく機能しない。Googleのサービスが正しく機能するためには、同社は絶えずウェブを巡回し、インデックスを更新し、リンクスパムをはじめ、検索結果に影響を及ぼそうとするあらゆる試みを排除し、次々と打ち込まれる数億の検索ワードに休むことなく動的に対処し、なおかつ、文脈に合った広告を表示していかなければならない。

     Googleはシステム管理、ネットワーク、そして負荷分散に関する技術を、おそらくは検索アルゴリズムそのものよりも厳重に保護している。これは競合他社に対する同社のコスト優位性が、主にこれらのプロセスを自動化したことによってもたらされているからだ。

     Web 2.0企業では、Perl、Python、PHP、そして最近ではRubyといったスクリプト言語が、非常に大きな役割を果たしている。これにも相応の理由がある。よく知られている通り、Sunの初代ウェブマスターだったHassan Schroederは、Perlを「インターネットのダクトテープ」(どの家庭にもひとつはあるような粘着テープ)と呼んだ。ソフトウェアがモノだった時代の技術者からは、スクリプト言語と呼ばれて見下されることの多かった動的な言語は、今ではシステム管理者、ネットワーク管理者、そして絶え間ない変更を必要とする動的なシステムを構築しているアプリケーション開発者からも支持されている。

  2. オープンソースの開発慣行にならい、ユーザーを共同開発者として扱う(これはオープンソースライセンスに基づいてリリースされる可能性が低いソフトウェアにも当てはまる)。「早期に、かつ頻繁にリリースする」というオープンソースの格言は、「永久のベータ版」という、さらに進歩的な概念へと姿を変えた。ソフトウェアはオープンな環境で開発され、月ごと、週ごと、時には日ごとに新機能が加えられる。Gmail、Google Maps、Flickr、del.icio.usといったサービスのロゴから、何年間も「ベータ」の文字が外れなかったとしても驚くには当たらない。

     したがって、ユーザーの行動をリアルタイムで監視し、どの新機能が、どのように利用されているかを観察することも、Web 2.0企業の重要なコアコンピタンスとなるだろう。ある大手オンラインサービスのウェブ開発者は次のように述べている。「毎日、2つか3つの新機能をサイトのどこかに追加するようにしている。ユーザーが使わないようなら、その機能は取ってしまう。ユーザーの気に入るようなら、その機能をサイト全体に広げる」

     先頃、Flickrの主任開発者であるCal Hendersonは、Flickrが30分ごとに新しいビルドをインストールしていることを明らかにした。これは従来とはまったく異なる開発モデルだ!すべてのウェブアプリケーションがFlickrほど極端な方法で開発されているわけではないにしても、ほとんどのウェブアプリケーションはPC時代やクライアント・サーバ時代とはまったく異なるサイクルで開発されている。先日、MicrosoftにGoogleは倒せないという記事が米ZDNetに掲載されたが、その根拠はここにある。「Microsoftのビジネスモデルは、すべてのユーザーが2、3年ごとにコンピューティング環境をアップグレードすることを前提としている。それに対して、Googleのビジネスモデルはすべてのユーザーが毎日、自分のコンピューティング環境を使って、新しい情報を探すことを前提としている」

 ライバルから学び、最終的には打ち負かす能力をMicrosoftが十二分に備えていることは、過去の歴史が証明している通りだ。しかし、今度の競争に勝つためには、Microsoft(ひいては既存のすべてのソフトウェア企業)は、これまでとは本質的に異なる企業となる必要がある。一方、純粋なWeb 2.0企業は脱ぎ捨てるべき古いパターン(とそれに呼応したビジネスモデルと収益源)を持たないため、既存の企業よりも有利なスタートラインに立っている。

Web 2.0的な投資方針

 ベンチャーキャピタリストのPaul Kedroskyはこう書いている。「重要なのは、自分が世間の共通認識に違和感を持っている部分で、実行可能な投資を見つけることだ」。興味深いことに、Web 2.0を実践している企業は、さまざまな側面で、世間の共通認識に反した戦略を取っている。たとえば、誰もがデータの保護にやっきになっていたときに、FlickrとNapsterはデータを公開することを選んだ。これらのサイトは、ただ単に既存の概念に反対しているわけではない(たとえば、バブル的なビジネスモデルの批判など)。そうではなく、世間の共通認識と、自分たちの認識の「ずれ」から、新しいものを創り出そうとしているのだ。それはFlickrの場合はコミュニティであり、Napsterの場合は膨大な楽曲コレクションだった。

 別のいい方をすれば、成功した企業は巨額の投資を必要とするものを諦める代わりに、かつては高価だった価値あるものを、無料で提供することにこだわった。たとえば、Wikipediaは編集プロセスを集中管理することを諦めた代わりに、スピードと幅と手に入れた。Napsterは「カタログ」の概念(音楽会社が販売しているすべての楽曲)を諦めた代わりに、広範なネットワークを手に入れた。Amazonは実店舗を持つことを諦めた代わりに、世界中にサービスを提供できるようになった。Googleは大企業を顧客にすることを(当初は)諦めた代わりに、放置されてきた残る80%の中小企業を手に入れた。ここにはきわめて合気道的な力(敵の力を利用して敵を倒すこと)が働いている。「その通り、世界中の誰もがこの記事を更新することができる。一部の人にとっては、これは実に厄介なことだろう」(Nat Torkington)

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