この問題に対処するため、Microsoftはマルチメディア対応PC用として「アウェイ」モードと呼ばれる第3のモードも開発している。このモードでは、ユーザーが電源ボタンを押すと、マシンは見かけ上オフになり、サウンドもオフになる。
それでもマシンは静かに稼働を続けており、必要に応じてテレビ番組を録画したり、別の部屋に置かれたテレビにコンテンツを配信したりできるようになる。
だが、Kayはマルチメディア対応デスクトップPC用の「アウェイモード」は概念的にエレガントさに欠けると述べている。見かけ上オフになるだけであることに異を唱える同氏は、「マシンには消費電力の低いスリープ状態になって欲しいはずだ」と指摘する。
Microsoftは、もっと気軽にPCの電源ボタンをオフにできるようにすることの他にも、マシン稼働時の電源設定をより簡単に行えるようにすることにも取り組んでいる。Windows XPの場合、少なくとも6つのオプションが存在しているが、そのうちのいくつか--たとえば「常にオン」や「バッテリの最大利用」といったオプションはまだわかりやすいものの、「プレゼンテーション」や「自宅/会社のデスク」などは意味がはかりかねるものとなっている。
これに対し、Vistaでは標準オプションは、「パフォーマンスを最大化する」「バッテリ電力の消費を最小限に抑える」「最適なものをWindowsに自動選択させる」の3つだけになる。
Microsoftはまた、PC出荷時のデフォルト設定を変更することによって、パワーマネジメントのあり方を変えようとしている。Vistaのデフォルト設定では、操作が一定時間行われないとモニターの電源が切れるようになる。そして、その後しばらく何も起こらなければ、システムはスリープ状態に入る。
Vistaの場合でも、これらの設定をユーザーが変更することは可能になるが、従来のMicrosoft製品との違いは、管理者権限が必要でない点だ。すなわち、ユーザーが頻繁に管理者モードに切り替えなくてもマシンを運用できるようになる。これにより、一般ユーザーとして行える操作を増やすことで、ユーザー自身のシステム管理を容易にする一方、スパイウェアやその他の悪意あるコードによるシステムの乗っ取りを困難なものとすることができるはずだ。
ほとんどのユーザーはテレビやその他の家電製品のようにPCを即座にオン/オフしたいと思っているとKayに言う。同氏によると、こういった考え方はIntelやMicrosoftが何年も前から宣伝してきているものの、未だに具体化できていない点だという。
「両社が協力すれば、人々が求めている機能を実現できる」(Kay)
さらにVistaでは、企業が望めば、社内すべてのコンピュータに電源管理に関わる特定の設定を強制することが可能になる。企業のIT管理者は、Microsoftのグループポリシー管理ツールを使って、いずれのマシンもたとえば1時間使用されなかったらスリープ状態になるように設定できるようになる。これに関して、米国環境保護局のデータによると、多くの大企業で膨大な数のコンピュータが常時稼働状態になっているとGraceffoは述べている。
「企業はこのスリープ状態を導入することで、アイドル状態のマシンをなくす手段を手にすることができる」(Graceffo)
Microsoftの上級幹部らによれば、同社が行おうとしている電源管理関連の変更によって、劇的な節電効果がもたらされるはずだという。
Windows開発の責任者であるJim Allchinは、7月に行われたインタビューのなかで、「われわれは期待できる節電効果を試算してみた」と述べ、「Vistaが稼働しているマシンが世界に1億台あるとした場合の節電量がどのくらいになるかという数値を自分の目で見た。信じ難い数値だった」と語っていた。
同氏は、それまでの成果をWindowsチームのメンバーに見せ、彼らの志気を高めようと、その試算値を内々に明らかにしたという。しかし、Graceffoによれば、Microsoftは数値を確固たるものにしてから売り込みために、この試算値を公表していないという。
Microsoftがこの目標を実現する上では、ソフトウェア企業からのサポートが必要不可欠となる。ユーザーは、自らの使用するソフトウェアがきちんと動作して初めて、デフォルトの省電力オプションを使い続けるからだ。Vistaの場合、プログラムはWindowsマシンがスリープ状態に入ることを阻止できないため、そのような状態遷移をうまく取り扱おうとすると、書き直しが必要になるアプリケーションもある。
Microsoftは、こういった問題に積極的に取り組もうとするソフトウェア企業のために、PCの電力状態の変化がプログラムに通知されるようにすることを計画している。例えば、コンピュータの電源プラグが抜かれてバッテリ電源に切り替わった場合、そのことを知らされたプログラムは、グラフィックスの描画方法をより簡素なものに変更することができる。また、モニターの電源がオフになった場合、そのことを通知されたプログラムは、ディスプレイに描画指示を行わないようにすることができるようになる。
電源管理にまつわる変更は、Windowsを搭載したノートPCを使用する際のユーザーエクスペリエンスを向上させるために、Microsoftが行っている幅広い取り組みとも結びついている。
MicrosoftはVistaで、電源管理のオプション、ディスプレイ設定、システムの音量、同期オプションなど、ノートPCの動作設定をすべて一元管理できる機能を設ける計画だ。「モビリティセンター」 というこの機能は、Windows XPのService Pack 2から追加された「セキュリティセンター」のコンセプトと似たものになる。
Graceffoは、自らのチームが行っていることは格好いいものではないかもしれないが、それは過去のWindowsでは成しえなかった「当たり前に動作する」ことをVistaが確実にできるようにする取り組みの一環だとしている。
「これを退屈であくびが出そうなものと捉える人もいる。(しかし)われわれにとっては重要な分野だ」(Graceffo)
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