Yahoo!、MSNメッセンジャーの相互接続が意味すること - (page 2)

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パラダイムシフトが始まる

 しかし今、状況は少しずつ変化してきている。

 IP電話サービスを提供するSkypeの全世界レベルでの勃興やGoogleのIM/IP電話サービス「Google Talk」の提供開始は、IMサービス環境に変化をもたらしつつある。

 テキストチャットを中心としたIMサービスではなく、音声チャット≒IP電話サービスを前面に押し出したサービスが常時接続ブロードバンド環境の普及に伴い脚光を浴びるようになったのだ。

 何のことはない。先行するIMサービス提供者も音声チャットの外部音声ネットワーク=公衆電話網への接続サービスは有料で提供してきた(日本では打ち切られてしまったものが多いのだが・・・)。しかし、Skypeの極めて明瞭な音声コーデック品質は、オマケ的なレベルにとどまってきたIMのIP電話機能とは一線を画しており、有料の公衆電話網接続サービスSkypeOutは急速な勢いで成長してきている。

 再度、マイクロソフトも前述した企業向けIMプラットフォーム「Live Communications Server」を、IP電話機能を充実させたオフィスコミュニケータークライアントとして提供を開始することで音声コミュニケーションサービスを前面に打ち出してきている(関連記事)。

 要するに、テキストチャットではなく、再び「電話」の時代が始まったのだ。ただし、それは今やどの家庭にもあるPC+ブロードバンド環境の上で。そして、それはNTTグループが提供する「ひかり電話」のように受話器を必須とするものではなく、あくまでソフトフォンとして提供され、IMの歴史にのっとって基本料金などは存在しない。見た目も含めて、これまでの電話とは異なる形態ではあるものの、これまでの電話網を基盤とした音声通話サービスを本格的に根本から崩壊させるものだ。

残る矛盾

 しかし、これまでのIM事業者、そしてSkypeにしてもGoogle Talkにしても、そのユーザー間(ネットワーク内部)の通話はこれまでのIM同様に無料であり、ビジネスモデルはそれ自身が現在駆逐しつつあるアナログ(あるいは受話器や携帯電話を用いた電話会社が提供する旧来の)電話サービスへの接続料金に依存するものとなっている。すなわち、ライバルがある程度の規模で存在する限りは事業が成立するものの、ネットワーク外部性が過剰な慣性を持ち始めた(=通話対象への接続が有料ではない可能性が圧倒的に多くなる)瞬間にビジネスは縮小していくという矛盾をはらんでいるのだ。

 この矛盾を一気に加速してしまえ!というのが、今回のYahoo!とMicrosoftのIM相互接続の意図であるとしたら、確かに新興のプレイヤーに対する防御策になると同時に自らの事業領域の数少ない課金可能なサービスの機会をも破壊させてしまうというポイズンピル的な選択に他ならない。短期的ではあっても課金可能な数少ない事業機会をつぶしてしまうことになるのだから。

 そうまでしても、IMやIP電話サービスを端緒にネットサービス領域に進出してくる第2世代のメジャーインターネットプレイヤーを排除したいという、Yahoo!やMicrosoftの意識とはどのようなものなのだろうか。もう、IMはコモディティとして事業化を諦めたという宣言なのだろうか。

 もし、そうだとしたら、そもそもIP電話の出現により老い先短いことを宣言されてしまっていた公衆電話網を提供する電話会社は、そのとばっちりを食らってさらにその余命が短くなることになるわけで、気の毒だとしか言いようがない。

 とはいえ、これらの話は主に米国が影響するエリアであり、いかに507万ユーザーを抱えるMSNがYahoo!とIM市場を二分する日本であっても、そのサービス互換性が米国とは異なる(関連記事)ため、どの程度の変化がもたらされるかは不明なのが実際だ。

IM/IP電話サービスの行き着くところ

 これまでも、IMの価値とは、チャットそのものよりも相互に表示を了解したユーザー同士がリアルタイムにPCを使っているかどうかがわかるという「プレゼンス」機能にあるとされた。しかし、この機能もあれば便利だが、それを使ってどうこうするというほどのレベルには達してはいない。

 IM同様、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)も面白いし便利だけれど、短所も多く、今後どうなるか注目されているサービスのひとつだ。これらにブログのようなサービスも含めて、人間関係性(リレーションシップ)マネジメントととらえて検索サービスの質的向上を目指す動きが出てきている。

 例えばYahoo!の360°のような複合サービスは、IMでつながっている人やSNSで相互にリンクしている人=人間関係性の高い状態にあるユーザーは同質的な価値観で検索結果を評価するのではないかという仮説を基にして提供されている。

 単独ではカネにならないというIMや、既存サービスとの接点こそが収益ポイントであるにもかかわらず、既存サービスとの代替が宿命つけられるという矛盾を孕んだIP電話サービスは、最終的には検索のようなメタサービスのプラットフォームとしてビジネス的には機能するしかないのだろうか?とはいえ、検索自体でカネは取れないという点では同じ。

 今後、有力IMサービスの相互接続を起点に、どんな連鎖反応が始まるかわくわくしながら見守ることにしよう。

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