ポータルからクオリティーメディアへ--社長が語るエキサイト好調の理由 - (page 2)

インタビュー:西田隆一(編集部)
文:野田幾子
2005年10月24日 08時00分

--つまり、都市在住のいわゆるF1層(20〜34歳女性)へターゲットを絞ったメディア作りへと変化したのですね。

 はい。自社でコンテンツ--雑誌で言えば第一特集--を作ることに挑戦してみました。フラッグシップとして機能し、且つエキサイトの文化を変えるのに成功したのが、2002年11月より開始したウェブマガジン「エキサイトイズム」です。旧態依然としたポータルサイトとの差別化が図れたと思っています。

 というのも、ひとつのポータルサイトですべての用事を済ませる人はいないでしょう。ショッピングは楽天、書籍やCDを買うならアマゾン、オークションならヤフー--ひとつのサイトで多様化しているユーザーのニーズを囲いこむことはできません。ですから、何かしらの役割を持たせる特長あるコンテンツづくりという方向へシフトました。

 エキサイトは「文化を創るメディア」。そうであるからにはメディアとしての主張を持つ、プッシュ型であるということです。もちろん検索やコミュニティサービスも提供していますが、エキサイトの顔はあくまでも「エキサイトイズム」「エキサイトガルボ」なのです。

 クオリティーの高い媒体にはクオリティーの高い広告主が入りますから、広告の質も変化してきました。広告タイアップメニュー「イズムエキストラ」も作りましたし、「今年はグッチの/ルイヴィトンの広告を取ろう」と邁進している最中です。ブログと連動させるなど、広告主がいろんなチャレンジをできるような場所の提供もしています。

--ブランドコンテンツ、コミュニティ、ゲームなどそれぞれユーザー層が異なると思いますが、戦略的な切り分けはどうなさっているのでしょうか。

 ひとつの方法としてセグメント化があります。例えばゲームは、個別ドメインを取得してブランドを確立しました。仮に今後、団塊の世代に向けたコンテンツを作るとしたら、やはり別のブランドでやるでしょう。イメージとしては、女性誌の「Very」を購読していた読者層が、年齢を重ねたときに読む雑誌として「Story」が創刊されたような感じでのブランド作りを考えています。

 まずは、「インターネット広告はとりあえずヤフーに出しておけばいいか」という広告主の意識を変えたいのですね。広告媒体として指名してもらえるメディアを目指していますから。

--エキサイトでは早い段階からブログサービスも提供していますが、「エキサイトイズム」のようにセグメント化された編集コンテンツを提供するサイトの流れと、カスタマーがコンテンツを自由に作っていくブログの流れは、今後対立していくということはないのでしょうか。その点、どうやって折り合いを付けていくのでしょう。

 それはご指摘通りだと思います。最初からそういったことを想定して、ブログは「excite.co.jp」のURLを使わず、エキサイトの広告ネットワークとは別の扱いで運営しています。

 現状、エキサイトブログはアダルトコンテンツやアフィリエイトを受け入れないというポリシーで運営しているので、ユーザーがユーザーを守るというか、それなりにひとつの味がでてきているように感じます。つまり、エキサイトブログのユーザー像というのがかなりできあがってきているのです。確かに最初は不安を感じていましたが、逆に現在はその点に関して心配がなくなってきました。

 もちろん、ブログと編集コンテンツをミックスさせるというのもひとつの考え方としてはあります。例えばブログユーザーを市民ジャーナリスト的な扱いにするといったことです。それはひとつのチャレンジだし、これから可能性としてはあると思います。

--インターネット広告ビジネスは、いわば「フリーペーパー型」と言えますよね。今後もこのビジネスモデルは成立していくとお考えですか。

 はい、そう思います。インターネット広告は広告全体の約10%、5000〜6000億円までは伸びるでしょう。そのために作り手側の意識としては、コンテンツを「お金を払ってでも見たい/読みたい」と思わせるものにしていかなければなりません。

--1999年頃、「課金ビジネスは成り立たないのでは」という論調が盛んでしたが、エキサイトは課金ビジネスも成功・成長させています。今後の成長規模を考えると、広告と課金、どちらが中心に成ると思われますか。

 収入源としては、課金、広告、ECの3本柱になるでしょう。われわれとしては、それぞれが3分の1ずつを占める形が理想です。現在はまだ広告が2分の1を占めているので、それぞれを伸ばしながら展開させていきます。

 以前は「インターネットで本や株なんて買うわけはない」と言っていましたよね。しかし今の20代はインターネットで本を買い、音楽をダウンロード購入し、ネット上でコミュニケーションをとるようになってきました。ユーザー側が、売り手の予想以上のスピードで成長し、ネット文化が根付いたんですね。ゲームにしても、「プレイステーション」が一家に一台あることを考えると、これからはファミリーや女性へも広まるのではと考えます。

--今後、メディアとしてのエキサイトの方向性としては、現在若い層にターゲッティングしているところの層を広げていくのか、それとも同じ層を強化していくのか、どちらをお考えですか。

 基本的には、今の都市型F1/M1ユーザー層を強化していきます。テレビ、雑誌、新聞、ラジオなどと比較しても遜色のないメディアリーチ、「1日1000万人のユーザーがアクセスしている」と言い切れるまで極める。そこまでやれば、メディアとしての力を持っていると、堂々と言えるのではないでしょうか。

 インターネットメディアが力を持っていったとしても、雑誌やラジオがなくなるとは考えておらず、むしろ共存していくだろうと思うのです。ただ、マーケットはより狭くなっていくでしょうね。

--雑誌など、別媒体への展開は?

 基本はインターネットメディアを追究します。もちろん、インターネットコンテンツまとめて紙媒体にするということはありますが。

 インターネットメディアとしての目標は、信頼性を身につけること。現在は、ブログに書かれたことを無条件で信じるわけに行かず、ユーザーが正誤を判断しなければなりませんから。

 また、メディアとはそもそもローカルなものであり、グローバルにはなりにくいですよね。例えばCNNは世界中に知られてはいますが、一部の地域では強くてもまんべんなくブランドが通用するわけではない。そこで注目しているのがRSSです。グローバルメディアを作るきっかけになるのではないかな、と。

 詳細は申し上げられませんが、RSSにはほかにも大きな可能性と事業をブレイクさせるための要素を秘めている。現在、非常に注目している技術の1つです。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]