小さく考えていては、Microsoft、Oracle、さらにはGoogleといった超巨大企業と同じ市場で戦うことはできない。AdobeのCEO、Bruce Chizenがこの春、34億ドルでMacromediaを買収することに決めたのもそのためだった。
アニメーションソフトウェアのFlashを提供するMacromediaと、テキストファイルをオンラインで配布することを可能にしたPDF(Portable Document Format)技術の開発元であるAdobe--これは想像力を刺激される組み合わせだ。変化の激しいマルチメディアの世界で、コンテンツ開発者が常に最新のツールを求めていることを考えると、この買収によって、Adobeの地位はほぼ不動のものになったといってよい。
少なくとも、理屈の上ではそういうことになる。
もちろん、早合点は禁物だ。ソフトウェア産業の歴史をひもとけば、行き場を失った大計画の残骸をいくらでも見つけることができる。最もよく知られているのは、Novell再生に挑んだRay Noordaの失敗だろう。Noodraはドン・キホーテさながらにさまざまな分野の企業買収に挑み、Microsoftに対抗しようとしたが、ついにNovellを復活させることはできなかった。
Chizenは数々の問題を差し引いても、Macromediaの買収は両社にとって正しい選択だったと断言する。CNET News.comは先頃、Chizenにインタビューを行い、Adobeのビジネスと、テクノロジー業界の今後について話を聞いた。
--Macromediaの買収が発表された後、複数の投資家が訴訟を起こしました。これらの訴訟について、どうお考えですか。
無意味というほかありません。何の得があるというのでしょうか。この件については、これ以上コメントはできませんが、今回の買収に関しては、顧客や投資家など、あらゆる人々からなぜもっと早く決断しなかったのかといわれました。それほど自明の選択だったのです。
--あらゆる人々、とはいえないのではありませんか。たとえば、Jim Cramerは自身が司会を務めるCNBCの番組の中で、今回の買収にかなり冷めた評価を下していたとか。
Jimの見方はそうだとしても、他の人々はどうでしょうか。サイトやブログを見る限り、ほとんどの顧客が心配しているのは、合併後もAdobeはMacromedia製品を継続するのかということです。これは、どんな買収にもつきものの不安です。
--統合作業に関しては、ほかにも多くの不安が残されています。Adobeにとって、今回の買収はAldus以降、最も困難なものになるかもしれません。
財務面ではその通りです。しかし、Macromediaと当社の関係を考えてみてください。われわれはお互いのビジネスを理解しています。長年、お互いの動向に注目してきた間柄でもあります。われわれは隣人でもあります。AdobeとMacromediaの従業員の多くは、ペニンスラ(ベイエリア)地域に住んでいるため、距離的な障壁もありません。
--しかし、両社がひとつの組織として機能するようになるまでには、さまざまな障害を乗り越えなければならないのではありませんか。
どんな買収にも困難はつきものです。買収は簡単だ、合併は簡単だという人がいるとすれば、それは嘘をついているのです。買収も、合併も簡単ではない。それを承知した上で、われわれはこの挑戦に取り組もうとしているのです。
--業界では整理統合が進みつつあります。この流れは業界の雰囲気にも影響を与えているのでしょうか。今回の買収の背景には、ある程度の規模を確保しなければ、整理統合の波に飲み込まれる恐れがある、という考えがあったのですか。
規模が重要だとは考えていません。
--では、なぜMacromediaを獲得しようと考えたのですか。
当社は毎年、戦略計画の見直しを行っています。今年の戦略会議では、ユーザーにもっと豊かな経験を、さらなるアニメーション、グラフィック、そしてビデオを提供するためにはどうすればいいのか、Acrobatを中心とした連携をさらに拡大するためにはどうすればいいのかを話し合いました。そしてMacromediaに目を向け、「当社の資産にMacromediaを加えることができれば、もっと迅速に戦略を実行できるのではないか」と考えたのです。そうしなければ、戦略をスケジュール通りに進めることはできなかったかもしれません。規模よりも、このことが買収の決め手となりました。
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