Joe Krausは、ビジネスを仕掛けるタイミングも、もちろん手を引くタイミングも心得ている。
Krausは、インターネット検索企業の草分けの1つであるExciteの共同創業者として、1990年代に絶頂を極めたIT起業家の1人であった。また、幸運にもネットバブルの崩壊による影響を免れた企業家としても知られている。
現在彼は、ネットバブル華やかなりし時代から学んだ教訓を、新たに立ち上げた「JotSpot」のビジネスに活かそうとしている。JotSpotはオンラインのコラボレーション・オーサリングシステムを基盤とするアプリケーション開発を行っている。Wikiがビジネスの世界に浸透し始めるなかで、Krausはこの技術が企業のあり方を変える新たなツールになり得ると考えている。
このWikiブームがどこまで広がるのかはまだ分からない。Wikiに対して批判的な人たちは、Wikiの実績は言うに及ばず、その潜在的な可能性からしても、今のこのWikiブームは行き過ぎであると考えている。しかし、Krausは、Wikiが本格的なCRMアプリケーションの軽量版として機能すると考えており、企業の開発者が自家製のエンタープライズアプリケーション構築ツールとしてWikiを使うようになると言う。CNET News.comは先ごろ、Wiki技術の将来について、Krausに話を聞いた。
--Wikiの異常なまでの人気を考えると、ドットコムの第2の波になるのではないかと考えてしまうのですが。第1の波のときと状況は驚くほどよく似ているように思えます。
Wiki全般についてですか。
--ええ。
どんなテクノロジーでも必ず、大げさに取り上げられたり、悪く言われたりする時期があるものです。Wikiもそのうち「何の役にも立たないじゃないか」と思われるようになる時期がくるでしょう。そして、その後にWiki本来の使われ方が確立し、仕事の管理や共同作業に欠かせないツールとなるでしょう。
--企業内でもそうなるということですか。
そのとおりです。Bluetoothからブログまで、どんなテクノロジーでも、今のWikiのように異常なもてはやされ方をする時期を経て、いったん評価を落としてから、そのテクノロジ本来の場所で使われるようになっています。
--それはブログにも当てはまりますか。ブログに対する評価が落ちたことはまだないように思いますが。ブログの人気が異常に高まったのがほんの1年半ほど前ですから。
そうですね。ブログはおそらくまだ上昇カーブの途中の段階なのでしょう。でも、Bluetoothは明らかに1度評価を落としました。今ようやく、Bluetoothの面白いアプリケーションが登場し始めています。こうしたアプリケーションは、以前Bluetoothがもてはやされていた時期のものよりも、よほど理にかなっています。
--つまり、Wikiは単なる一時的な流行ではないと。
私は一時的な流行だとは思いません。私が2年前にこの市場に注目し始めたとき、1993年頃のインターネットに状況がよく似ている感じがして、面白いと思いました。1993年当時、インターネットは数万社の企業に導入されていましたが、実際に利用していたのは組織の最下部にいるエンジニアだけで、トップにいる経営陣は何も知りませんでした。Wikiもちょうどそんな感じだったので、これはこれから普及するテクノロジーだなと感じたわけです。
--なるほど。で、Wikiを使ったJotSpotはどう利益を上げるのですか。
JotSpotはサブスクリプションサービスです。われわれがホスティングしているサービスがあり、その他に「JotBox」というサービスもあります。これは、ファイアウォールの内側でのホスティングを望む大企業に向けた、アプライアンスベースのサービスです。将来的には、このアプラインスをリモート管理して、ソフトウェアアップデートの対象に含める予定です。
--ユーザーの数に応じた課金モデルを採用するのですか。
最初は、ユーザーの数に応じた課金モデルでいこうと考えていたのですが、今はそのモデルでは問題があると思っています。
--具体的には、何が一番大きな問題ですか。
ユーザーの数に応じて課金すると、このサービスを利用する最大のメリット--すなわち、Wikiを使った情報共有という行為に対して課金することになります。Wikiはコラボレーションツールですから、共有する人間の数が多いほど価値が高まるのですが、この課金モデルたとユーザー数が増えるにつれてコストも多くかかることになります。私はこのモデルは間違っていると思います。利用者がサービスから得る価値に対して代価を支払ってもうらうモデルのほうが良いでしょう。具体的には、Wikiで運用しているページ数をベースに課金するほうが良いと思います。
--今後、あなたの会社が提供しているようなWikiライクな製品の利用が大きく広がると確信されているようですが、その根拠は何ですか。
新しいテクノロジーはいつも簡単には普及しません。というのは、すでに確立している習慣があるからです。最も難しいのは、既存の習慣を変えることです。
--現在、Wikiと衝突しそうな習慣としては、どんなものがありますか。
電子メールや共有フォルダなどです。こうした既存の習慣を変えるには時間がかかります。Wikiは電子メールに取って代わるものではありません。電子メールがなくなるなどということはあり得ません。いくつかの新しいテクノロジーは、決して古いテクノロジーに取って代わるのではなく、古いテクノロジーとの中間に自分の場所を見つけるものです。
一般に、電子メールの受信件数が多過ぎるというのは、広く認識されている事実です。電子メールは優れた通信媒体ですが、結論や意志決定を保存しておく目的には適していません。われわれのような、Wikiの技術を提供する企業にとっては、電子メールという既存の習慣の中にどうやって入り込むかという点が課題になっています。Wikiを電子メールと同じくらい簡単に使えるようにするにはどうすればよいのか。この問題を解決するには時間がかかります。それはちょうど、新しい習慣が定着するのに時間がかかるのと同じです。1994年当時の検索も同じような感じでした。当時、検索はまだ習慣にはなっていませんでした。検索が習慣として定着するまで5年かかったのです。
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