エキサイト創業者に聞く、Wikiブームの実情 - (page 2)

Charles Cooper(CNET News.com)2005年08月25日 10時00分

--デスクトップパブリッシング(DTP)の普及にも時間がかかりました。DTPの場合は、エンタープライズ市場に裏口から入った格好でした。Wikiの場合も、広く受け入れられるまでに長い期間を要する可能性があります。であれば、その間に、他の明白な競合相手が市場に参入してくるとお考えですか。

 もちろんです。魅力的な市場であれば、当然競合他社も惹きつけられます。競合他社が参入してこないようでは、魅力的な市場とはいえません。Exciteを起業したとき、検索など誰も見向きもしませんでした。ところが急に多くの人が興味を持つようになり、ついにはMicrosoftまでが興味を持つようになった。いくつかの大企業が彼らの将来にとって重要だと思うようになれば、それは何か面白いものに目を着けたという証です。

--Wikiが大半のコンピュータユーザーの間に定着するまでにどのくらいかかるでしょうか。

 デスクトップパブリッシング(DTP)を例に考えてみましょう。20年前、タイプライターは安くてどこでも購入でき、誰もが使い方を知っていました。しかし、その出力は安っぽいものでした。一方で、印刷のプロに高い料金を支払えば、高価なマシンを使った美しい出力を得ることができました。

 DTPが普及し始めたとき、植字工たちはそれを冗談程度にしか受けとめませんでした。しかし、それはタイプライターを使える平均的な消費者にとって大変魅力的なものでした。それから20年以上経った今では、植字とタイプライターはDTPに完全に取って代わられています。DTPのケースは、Wikiにとって良いお手本になると思います。

--つまり、Wikiは長い時間をかけて起こる広範な技術シフトの一部であって、急激に普及するようなテクノロジーではないということでしょうか。

 何か1つの新しい分野を創り出そうとすると、本当に定着するまでには数年かかります。先ほど、なぜこれがドットコムの第2の波ではないのかというお尋ねがありました。その理由の1つは、JotSpotを含む企業がこの環境で規模を拡大していく方法が、1990年代後半のやり方とは異なっているからです。当時は、「OK、市場は今確かに存在する。会社の規模を数百人に拡大しよう」というやり方でした。今は、そういう方法はとりません。もっと慎重で現実的な方法をとります。

--具体的に、検索の場合を例に説明して頂けますか。

 1994年当時もやはり、検索はユーザーから求められていませんでした。当時、ユーザーに検索ボックスを見せて、「何か探してみてください」と言うと、決まって次のようなやり取りになったものです。つまり、「何を検索するんだい?」「何でも良いですよ」「何でもいいと言われても困るなあ」といった具合でした。結局ユーザーは自分の名前を入力して、自分関して十分な情報が提供されているかどうかを判断していました。しかし、少なくとも、ユーザーは検索という新しい分野をカテゴライズして、何をするものなのかを認識することはできたのです。それから、検索が習慣として定着するまでに5年かかりました。Wikiにも同じことが言えると思います。ほとんどの人たちは、アプリケーションを公開したいという自分自身の欲求を認識していません。

 Wikiアプリケーションで重要なことは、それが徐々に進化していくという点です。単にサイトが公開されて終わりではありません。また、最終的な形が決まっているわけでもありません。公開されたサイトは、時間をかけて変化することができます。リンクを変更したり、サイトの構造を変更したりできます。ユーザーはオーサー(作成者)でもあります。サイトの利用者、読者、作成者の間に違いはほとんどありません。また、この3者は非常に密接に連携されています。

--限られた投資で企業を運営することは、Exciteを起業した当時よりも簡単になっていますか。

 ええ。Exciteのアイデアを実現するには300万ドルかかりましたが、JotSpotの場合は10万ドルで済んでいます。

--それはなぜですか。

 理由は3つあります。Exciteを起業した当時は、高価なSunのサーバやディスクアレイといったハードウェアを購入する必要がありました。それに比べると、今日のハードウェアコストは微々たるものです。第2に、コンパイラ、アプリケーションサーバ、ウェブサーバなどにお金を使う必要がなくなりました。Linux、Tomcat、Apacheを使えばよいからです。基盤ソフトウェアが基本的に無料になったということです。第2に、われわれのような新興企業でも、海外の労働力を利用できるようになりました。これは1990年代初期にはできなかったことです。当時、IBMのような大企業は海外の労働力を利用していましたが、Exciteのような新興企業には不可能でした。

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