欧州委員会(EC)は、他企業の知的財産を侵害していると見られるソフトウェアを使用する企業に刑事罰を課すことができる法案を提示した。
ECが先月採用したこの指令案は、知的財産権を意図的かつ商業的規模で侵害した企業に対する刑事制裁を可能にするものだ。
DLA Piper Rudnick Gray Cary法律事務所のパートナーであるRichard Penfoldは先週、同指令案が可決されれば、他社の知的財産権を侵害しているソフトを使用する企業の経営者を「かなりの確率で」監獄送りにできると述べた。もっとも、侵害行為が意図的なものではないと被告が主張できれば話は別だ、と同氏は付け加えた。
企業がソフトメーカーではなくユーザーを標的にするのは異例だが、それでも有名な事例が1件ある。SCO GroupがLinuxの使用をめぐり、自動車メーカーのDaimlerChryslerと自動車部品小売大手のAutoZoneを提訴したケースがそれだ。SCOはこの訴訟の中で、AutoZoneがLinuxの使用を通じてSCOが保有するUnix関連の著作権を侵害し、DaimlerChryslerはSCOとの契約に違反したと主張した。
Foundation for Information Policy Research(FIPR)のRoss Anderson会長は、仮にこの指令案が可決されれば、将来SCOのような企業がオープンソースソフトに対する知財侵害訴訟を提起しやすくなる可能性があると指摘する。
「将来、SCOのような企業は、刑事罰の脅威という別の手段を手にすることになる。SCOはこの脅威を利用し、他企業に対し今以上に強力な法的圧力をかけられるようになるだろう。」(Anderson)
欧州フリーソフトウェア財団(FSFE)も、SCOが指令を自社に有利なように利用するのではないかと懸念している。FSFEのJoachim Jakobsによると、SCOは、企業経営者らを刑事裁判にかけられるだけでなく、犯罪捜査への参加も可能になるという。というのも、同指令は、問題の知的財産権の保有者が犯罪捜査を支援できる「合同捜査チーム」の設置を義務付けているからだ。
しかし、英国に拠点を置くOlswang法律事務所のパートナーであるPaul Stevensによると、ソフトウェアのユーザーが同指令の影響を受ける可能性は低いという。ユーザーに対して刑事裁判を起こす企業は悪評を受ける可能性が高いから、というのがその理由だ。
「知的財産権を保有する企業がユーザーを訴えるケースはそれほど多くない」(Stevens)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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