企業は、デジタルコミュニケーションを遮断する時間を確保する組織的な取り組みからメリットを得られるとHonoreは言う。同氏は、昨年から「金曜日は電子メール禁止」という方針を実施しているVeritas Softwareのマーケティング部門を例に挙げる。このルールの発案者であるJeremy Burton(同社エグゼクティブバイスプレジデント)は、それまで1日に400通もの電子メールを受け取っており、しかもその大半が部内からのものだった。
Burtonの部署では、金曜日に電子メールのやり取りを行うことが禁止されている。ただし、必要であれば顧客あるいは同社の他部署に電子メールを送信することは許されている。このルールが実施に移されてから、部員同士が直接対話する時間が増え、Burtonの受け取る電子メールの数が半減するなどの変化があったという。
そして、大きなプロジェクトの最終段階では、多くの社員が一斉にデジタルコミュニケーションを使わないようにしているが、これについてMicrosoftのCaposselaは、かならずしもそれが答えであるとは限らないはずだとしている。
Caposselaは、よくできたソフトウェアであれば、もっと良い解決策を提供できると言う。同氏によると、こうしたソフトウェアなら、オフィスワーカーがデジタルメッセージを常にやり取りできるようにしつつ、しかも上司や家族からなどからの受け取りたいと思うメッセージだけを受け取れるようにしておくことが可能なはずだという。
「仕事のための時間を、スケジュールのなかに確保してみよう」と同氏は言う。「たとえば、『この時間帯は某プロジェクトのためにとってある』と宣言しておけば、まわりの人間はその間、該当プロジェクトに関係のないことで君を煩わせないようにするぐらいの心遣いはしてくれるようになる」(Capossela)
Microsoft会長のBill Gatesは以前、オフィスワーカーがいかに情報に押し潰されそうだ感じているとしても、実際のところは「情報過少の問題」を抱えていると主張したことがある。同氏によると、今日のソフトウェアは情報をフィルタリングし、それをより便利な方法で見せるという点ではまだ満足のいくものではないという。
Microsoftは、オフィスワーカーが抱える問題をいかに軽減するかについて、はっきりしたことを明らかにしていないが、Caposselaによると来年発売予定のOfficeの次期バージョンはこの点でいくらか役に立つという。
IBM Research CenterのRussellは、同社が現在、Officeと競合するLotus Workplaceの次期バージョンで、スケジュール管理のより良い方法を提供するための取り組みを進めていると言う。
しかし、優れたソフトウェアがすべてを解決するわけではないとCaposselaは言う。テクノロジーは、人々がデジタルコミュニケーションに追い立てられる現状を緩和できるし、またそうするべきだが、ただし人々の優先順位付けも変わる必要があると同氏は言う。
「テクノロジーとわれわれは、ある意味で主客逆転してしまった。われわれはテクノロジーのスピードとリズムに合わせて行動するようになっている」(Capossela)
テクノロジーのせいで人がクリエイティブでいられなくなるということに加え、電子メールの送信、同僚との会話、上司へのインスタントメッセージの送信を同時に行おうとしても、何もうまくいかないとする調査が複数存在する。人間は同時に複数のことをうまく行えるようにはなっていないとRussellも言う。
同氏によると、問題は人間が同時にうまく行えるタスクの種類が限られているところにあるという。たとえば、(ほとんどの人は)電話で話をしながら料理をする、あるいはチューイングガムを噛みながら歩くということなら難なくこなせる。しかし、数学の問題を3つ同時に解こうとしても、うまくいかないのだ。
「現代生活の矛盾は、マルチタスクで何かを処理しようとすると、ほとんどの場合に生産性が落ちるということだ」(Russell)
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