Microsoftの基礎研究所であるMicrosoft Research(MSR)と、同社日本法人のマイクロソフトは6月28日、日本における産学連携の取り組みを強化すると発表した。この取り組みにおいて両者は、共同研究プロジェクトの拡大と充実および、大学との提携における推進組織として「マイクロソフト産学連携研究機構」(IJARC:Microsoft Institute for Japanese Academic Research Collaboration)を7月1日に設立する。
IJARCでは、これまでマイクロソフトが日本において一部の大学と行ってきた共同研究プロジェクトを拡大するとともに、研究内容の充実を図る。具体的には、東京大学 大学院情報学環 教授の池内克史氏をディレクターとするアカデミックアドバイザリーコミッティ(顧問委員会)を設け、学術的かつ戦略的な視点から研究プロジェクトを選定する。各プロジェクトにはMSRの担当研究員が配置され、研究テーマや研究プロセスに関して助言する。
Microsoft会長のビル・ゲイツ氏を中心とし、MSR Asia所長のハリー・シュム氏(左)、IJARC顧問委員会ディレクターの池内克史氏(右)ら関係者が壇上に並んだ |
現時点で内定している共同研究プロジェクトは、東京大学 大学院新領域創成科学研究科教授の相澤清晴氏による「グラフィックスサーチ」、東京大学 大学院情報理工学系研究科教授の五十嵐健夫氏による「ユーザーインターフェイス」、東京大学 大学院情報理工学系研究科教授 辻井潤一氏による「自然言語処理」の3プロジェクトだ。今後はプロジェクトの公募も予定している。
また、マイクロソフトはIJARCを通じて、日本の大学との提携関係を拡大させる。これまでの提携関係としては、2002年2月にMSRが東京大学と覚書を締結し、マイクロソフト社員による特別講義やインターンシップ、MCAコースの試験導入を実施したことや、2003年11月にマイクロソフトが早稲田大学と覚書を締結し、2004年4月より同校にてWindowsテクノロジーを基盤としたカリキュラムを提供していることなどがある。今後もマイクロソフトでは、東京大学や早稲田大学との提携関係をさらに発展させ、学術交流やインターンシップ、フェローシップの実施による研究者育成、IT教育支援や共同研究、研究助成を実施する。さらに、今後他の大学への拡大も検討するとしている。
東京大学の池内氏は、今回の産学連携プロジェクトの主な目的を2つ挙げている。それは、「マイクロソフトの日本の学会への寄与を明確にし、同社の研究者がより簡単に、より密に大学の研究者と共同研究できるようにする」ということはもちろん、「日本の大学がマイクロソフトと共同研究することで、日本の学術界における研究成果をマイクロソフトを通じてアウトプットし、世界における日本の研究の認識度を向上させたい」としている。
Microsoft 会長兼チーフソフトウェアアーキテクトのビル・ゲイツ氏は、「Microsoftとして独自の研究開発は行っているが、わが社の力だけですべてができるものではない。技術革新の多くは、優秀な大学から生まれてくるものだと考えている。今回の産学連携の強化により、今後もMicrosoftの優れている点と、大学の優れている点を組み合わせる方法を模索していきたい」と述べた。
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