アップルのコード変換ソフト「Rosetta」をめぐる期待と不安

Stephen Shankland(CNET News.com)2005年06月09日 11時27分

 Transitiveというシリコンバレーの新興企業が、PowerPCからIntelチップへの移行に関して、重要な橋渡し役となる技術をApple Computerに提供しているが、同種の製品を悩ませたパフォーマンスの問題を懸念する声もすでに上がっている。

 Transitive(本社:カリフォルニア州ロスガトス)は、Appleの「Rosetta」というソフトウェアにコード変換エンジンを提供している。Rosettaは、現行のPowerPCを搭載するMac用に書かれたソフトウェアを、今後登場するIntelベースのマシンで動作させるためのソフトウェアだ。TransitiveのCEO、Bob Wiederholdは、「Appleとはかなり前から協力してきた」と米国時間7日に語った。

 Rosettaは、あるプログラムの動作中に、PowerPC向けのの命令を対応するx86チップ用の命令に変換する。変換できるプログラムには限りがあるが、このソフトウェアを利用すれば、Appleの顧客やソフトウェア開発者が直面する移行作業が簡単になるとされている。Apple CEOのSteve Jobsは6日、WWDCの基調講演でRosettaのデモを行い、PowerPC版のAdobe PhotoshopとMicrosoft WordおよびExcelがIntelチップを搭載したMacで動いている様子を聴衆に披露した。これら3つは、Macintosh製品の成功に欠かせないアプリケーションだ。

 JobsによるRosettaのデモはスムーズに進んだ(同氏は実際に、複数のドキュメントを読み込んで編集してみせた)。しかし、AppleとTransitiveの両社は、Rosettaでパフォーマンスの課題に直面している。あるチップ用に書かれたソフトウェアを、異なるチップを搭載するマシンでも動かそうとしたコンピュータメーカーの例は、過去にいくつかあったが、そうした試みが成功を収めたことはこれまでほとんどなかったからだ。

 Illuminataのアナリスト、Gordon Haffは、「バイナリ変換が基本的にうまくいかないことは、これまでの歴史を見ればわかる。誰かが非常に優れた変換処理を実現する日が来るかもしれない。だが、コンピュータ業界ではこのような構想が何度も頓挫し、明らかな失敗に終わるのが常だった」と語っている。

 しかし、Transitiveでは、新しいプロセッサにネイティブ対応するようコンパイルされたソフトウェアの処理性能と、古いプロセッサ向けにコンパイルされたソフトウェアを新型マシンで動かした場合の処理性能との比較に関して、敢えて高い目標を設定しようとしている。

 Transitiveにとって初めての顧客はSilicon Graphics(SGI)だったが、同社のマシンでは、古いプロセッサ用に書かれたソフトウェアが、ネイティブ対応するソフトウェアに対して、少なくとも8割の速度で動作したと、Wiederholdは述べている。しかし、これだけの結果が出せたのは、SGIのシステムがコード変換によるハンディキャップが皆無もしくはほとんど無いグラフィックス処理向けだったことも関係すると、同氏は説明している。

 それに対して、計算負荷の高い処理では、コード変換ソフトを使った場合のアプリケーションのパフォーマンスが、ネイティブ対応ソフトの60〜80%になったと、Wiederholdは述べている。

 また、Insight 64アナリストのNathan Brookwoodも、コード変換ソフトを使った場合のパフォーマンスに懐疑的だ。「だれかが『50〜60%の速さで動く』と言った場合、実際には30〜40%になることがほとんどだ」(Brookwood)

 過去にコード変換ソフトの採用を試みた例はいくつかある。Digital Equipment Corp(DEC)は、自社の「FX!32」を使ってx86チップ用に書かれたWindowsプログラムを、Alphaチップ搭載コンピュータで動かそうとした。Hewlett-Packard(HP)でも、「Aries」でPA-RISCチップ用のHP-UXソフトをItanium上で動かそうとした。また、Intelはx86チップ用のソフトウェアをItanium上で動かすために「IA32-ELx」を開発した。

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