今回の新サービス開始に向けて、鷹山はPHS事業のアステル東京で利用しているPHSインフラをWiMAXまたは無線LANに変更する。同社のPHS基地局は稼働中のものが首都圏に約4万2000局、休止中のものが約2万8000局ある。これらの基地局のPHSアンテナを、順次WiMAXのアンテナまたは無線LANアンテナに置き換える。
6月から行われる実験では、WiMAXの基地局にAirspanのMicroMAXという製品を利用する。これは都市部向けに出力を抑えた機器で、1基地局あたりのサービスエリアは4km程度という。規格化が完了している802.16-2004に対応するほか、アップグレードによって移動体通信規格の802.16eに対応することも可能とのことだ。
通常、無線局をビルに設置する場合はビルオーナーとの契約が必要になるが、鷹山はすでにPHS基地局を設置しているため、この交渉が不要になるという。新規に基地局を設置するにはビルの選定や交渉に4カ月から1年の期間がかかり、1基地局あたりの工事費用は150〜300万円が必要となるが、「すでにあるPHS基地局をWiMAX基地局に変えるだけならば期間は約1週間、工事費用は10〜20万円で済む」と高取氏は自信を見せる。
さらに、バックボーンをISDN回線から東京電力が提供する光ファイバサービスに切り替えることで、通信コストを抑える。ISDNでは通信量に応じてインフラコストがかかるが、光ファイバによるIPネットワークにすれば通信量にかかわらずインフラコストは一定になる。また通信速度は64kbpsから100Mbpsへと高速化するため、サービスを高速化することができるというわけだ。
ただしWiMAXを商用サービスで使うには、利用周波数が問題となる。WiMAXの利用推進を図る業界団体のWiMAX Forumでは、2.5GHz帯(2.3〜2.4GHz/2.5〜2.7GHz)、3.5GHz帯(3.3〜3.8GHz)、5.8GHz帯(5.25〜5.85GHz)のいずれかを利用するように推奨しているが、日本国内ではWiMAX用に割り当てられた周波数帯はない。鷹山はこの問題を、6月からのフィールド実験と12月からの本サービスで違う周波数帯を利用することで乗り切る方針だ。
まず、6月からの実験ではWiMAX Forumが推奨する5.725GHz帯を利用する。しかし本サービスではより低い周波数の4.95GHz帯を使う。
5.725GHz帯は国内では船舶・航空機等のレーダーやアマチュア無線、ETCなどが利用しており、干渉が起きる可能性が高い。これに対して、4.95GHz帯は屋内外の無線アクセス用として総務省が規制緩和を進めており、5月には電波法が改正されて出力制限が緩和される見込みだ。つまり、各アンテナの出力を高くすることができるため、基地局から離れた場所でも通信ができるようになる。
現在4.95GHz帯は固定マイクロ回線が利用しているが、周波数の再編に伴って11月末までにほかの周波数帯へ移動するとみられている。これにより、鷹山は12月以降の本サービスでは4.95GHz帯を利用できるようになるもくろみだ。
ただし、4.95GHz帯はWiMAX Forumが推奨するものではない。このままでは鷹山が利用する端末はWiMAX準拠とは言えず、海外とのローミングや機器の相互運用性が確保できない恐れが強い。また、機器が鷹山専用となれば、量産効果が出せずに機器の価格が高止まりする可能性もある。そこで鷹山ではAirspanと共同で、日本市場向けに4.95GHz帯をWiMAX Forumの推奨周波数帯域に加えるよう要請する方針だ。
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