Royal Philips Electronicsの研究者が、数年間にわたって研究を続けてきたあるテクニックを使い、既存のコンピュータメモリに代わる可能性を持つ物質を開発したことを明らかにした。
この物質は、アンチモンテルルと呼ばれる半導体合金で、相変化メモリの開発に使える可能性がある。相変化メモリはCDやDVDとほぼ同じ仕組みで機能するもので、物質の表面の1点にレーザーを照射して反射が起こった反射で1と0を記録する。どちらになるかは、照射点が不定形から整列状態にあるかによって決まってくる。
もし、この素材が商用で利用できるようになると、それを使ったチップは、現行のDRAM(コンピュータに搭載され、データの一時保管場所として用いられる)やフラッシュメモリ(携帯電話に搭載され一時的または永続的に情報を保存する)、ハードディスクに取って代わる可能性がある。
一方で、不定形のビットをどのように結晶体に変えるかという課題も残されている。一般に、相変化を起こす物質は、数ナノ秒間で摂氏数百度まで熱しながら(このためには大量の電気エネルギーが必要になる)、余ったエネルギーが隣接するメモリー素子を変化させないようにする必要がある。たとえば、IBMのMillipedeの場合、何千という極小サイズの針を摂氏300度まで熱することで、データを記録している。
エルピーダメモリやIntelなどは、別の種類の相変化メモリであるOUM(Ovonic Unified Memory:OUM)の研究を何年間に続けている。
ムーアの法則で有名なGordon Mooreが1970年に、OUMについての明るい将来を予見しているものの、いまだに商用ベースの大量生産を実現したものはいない。
Philipsは、アンチモンとテルルを組み合わせたこの物質が、0.7ボルトで相変化を起こすと説明しているが、これは通常のシリコンと比較しても非常に電圧が低い。相変化は非常にすばやく発生するが、このプロトタイプでも30ナノ秒以内に変化が起こっている。
世界中の研究者らは、自らの働く企業をムーアの法則の呪縛から解き放つような物質と構造物を捜し求めている。シリコンベースのプロセッサ製造から開放されることで、企業はさらに高速で消費電力が少なく、省スペースなチップを開発し、製造コストを下げたいと考えている。
これらの物質でできた新種のチップは、今後20年以内に登場すると見られている。だが、このうちのどれかが大量生産にこぎ着けるという保証はない。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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