ビデオゲームメーカー最大手のElectronic Arts(EA)が、一部の従業員に対する残業手当の支払いを計画している。しかし、これらの従業員にボーナスやストックオプションを支給することはないという。
EAが来月からこの労働条件の変更に踏み切る背景には、同社を相手取った従業員による訴訟が相次ぎ、さらにゲーム業界における過酷な労働に対する批判が高まっている、との事情がある。シリコンバレーでは伝統的に、労働者は長時間労働に対する報酬を会社の株式や賞与などの形で受け取るプロフェッショナルとして扱われてきたが、今回の事例はこの伝統の大きな転換を示している。
同社幹部のRusty Rueffは米国時間8日に、北米の従業員に今回の変更の概要を記した連絡メモを配布した。その中でRueffは、「EAは従業員がプロフェッショナルとして柔軟な働き方ができる雇用環境を整えてきた。それにより、従業員が時計を見なくても労働時間を管理できるよう期待した」と述べ、さらに次のように続けた。「残念ながら、労働法はこの起業家精神、技術革新、創造性に対応していなかった。また、最近、EAやSonyといったカリフォルニア州に拠点を置くハイテク企業に対する訴訟が相次いで提起されたのを受け、われわれは特定の従業員グループの従来の分類方法の見直しを行った」
EAは全世界におよそ5800人の従業員を抱え、米国勤務者はその半数弱にすぎない。
今回EAが残業手当の支給に踏み切った背景には、ソフトウェア開発企業の経営が改善する一方で、株による思わぬ大儲けが望み薄な中、最近、同業界の従業員の労働時間が全般的に短縮化しつつあるという事情がある。しかしゲーム業界は比較的新しい業界であり、昨年実施された調査によると、数カ月間に及ぶこともあるプロジェクトの「繁忙期」には、週の労働時間が65〜80時間に達することも珍しくないという。
昨年暮れに、EAに勤務する開発者の婚約者が匿名のエッセーの中で、同社が従業員に過酷な労働を強いている点について激しく非難した。このエッセーをきっかけに、ゲーム開発業界の労働条件についての不満が噴出した。
これについてEAは問題を認め、労働条件の改善を公約した。同社の広報担当のJeff Brownは10日、改善策の一例として、同社は、映画「The Godfather」シリーズを基にした新作ゲームを開発するに当たり、150人で構成されるチームをまとめる7人のプロジェクトマネジャーを設置することを決めたと発表した。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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