クレジットカードを使用するたびにカードリーダーに通したり、署名するのはもうウンザリという方も多いのではないだろうか。
Visaは米国24日、クレジットカードでの支払いプロセスを簡素化する新技術を導入した。この技術は「非接触型」システムと呼ばれるもので、消費者は、5〜8センチ以内の距離からリーダーにクレジットカードやデビットカードをかざすだけで買い物が完了する。また、購入総額が25ドル未満の場合は署名の必要もない。
Visaの幹部らによると、同技術を導入することで、レジでの会計や順番待ちの時間が短縮されるため、加盟店と消費者の双方にとって利便性が増すという。また同技術を利用すれば、ソーダ水やガムを1つだけ購入するといった少額の買い物の場合も、現金払いより簡単に決済を済ませることができる。
Visa USAの市場/技術革新担当バイスプレジデント、Niki Manbyは、「われわれはこの非接触型支払い機能によって、買い物の利便性、迅速性を高めたいと考えている」と述べ、さらに「今後はカードをリーダーに通したり、店員に手渡す必要はない」と語った。
しかし、クレジットカードやデビットカードをあちこちの店でかざして回るのはまだ早い。Visaはまず加盟店とカード発行会社を説得し、新装置を使わせなくてはならない。ただし、これを使うためには、加盟店は新たなカードリーダーを購入しなければならず、銀行も口座のデータを磁気ストライプではなく無線信号で送信できる特別なカードを導入しなくてはならない。Manbyによると、いまのところそのような特別なカードを発行している企業は皆無だという。
全米で560万もの加盟店を抱えるVisaは、既存のシステムを段階的に廃止するのにある程度の時間が必要となるだろう。
「これは各小売店が一晩で容易に行なえることではない」と調査会社Forrester Researchのアナリスト、Pennie Gillespiは述べている。
新技術の導入に取り組んでいるのはVisaだけではない。MasterCardとAmerican Expressも非接触型カードの試験を実施している。MasterCardはフロリダで実地試験を行ない、American Expressはアリゾナとニューヨークでテストを行なっている。3社とも互換性のある技術を使用しているため、加盟店は3社のシステムに対し同じカードリーダーを使用できる。Visaの新製品開発担当シニアバイスプレジデント、Patrick Gauthierによると、各加盟店はカードリーダーが全てのカード会社のシステムに対応できるよう特別なソフトをインストールする必要があるという。
Gillespieによれば、Visaをはじめとするカード会社がこの新技術をさらに普及させるためには、まだ乗り越えなくてはならない障害が残っているという。カード会社は、加盟店を説得して新しいリーダーを購入させなくてはならず、さらに、個人情報の盗難やハイテクを使ったハッキングが横行する時代に、この最新型カードが従来のカードと同水準の安全性を備えていることを消費者に確信させなくてはならない。
Visaはこのシステムに高い安全性を持たせるために、複数のレイヤの暗号化技術や不正使用を検知する技術を盛り込んでいるとGauthierは言う。同氏によると、このシステムでは、カードとリーダーがデータをやりとりする毎に固有のコードを使うため、たとえ傍受されたとしても、再利用できないようになっているという。さらに、消費者は従来のカードと同様に、新しいカードが不正使用された場合には、その分の支払義務を免除されると同氏は付け加えた。
「セキュリティはわれわれのビジネスの中核を為す事柄だ」とGauthierは述べ、さらに「われわれが開発したこのプラットフォームは、いまあるどのVisaカードと比べてもセキュリティの点ではまったく遜色がないと自信を持っている」(Gauthier)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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