2005年2月24〜25日にかけて日本IBMのプライベートショウ「IBM フォーラム 2005」が開催された。同フォーラムは、同社の各種ソリューションの展示紹介のほか、さまざまなセッションが実施されるもの。2日目となる2月25日の基調講演は、日本IBM代表取締役会長 北城恪太郎氏が「日本経済の現状と展望」と題して語った。
北城氏は、「2005年1月に先進国が集まって行われたダボス会議において、200以上のセッションの中で日本に関するものがわずか1つしかなく、6つもあった中国と比較すると、日本経済の関心の低さがうかがえる」と冒頭で述べた。
日本IBM 代表取締役会長 北城恪太郎氏 |
また、先進国の中で日本だけが累積赤字が増え続けている現状への危機感を持つ必要があることを指摘し、100年後に人口が半減する可能性もある日本は、これまでとは経済発展のあり方を変えていかなくてはならないと警告した。そして、国際競争力をつけて発展していくためには、イノベーションによる成長基盤の構築が不可欠だと促した。
実際に日本経済は、2004年前半こそ高い輸出の伸びに加えて、設備投資や個人消費などの内需拡大によって成長を遂げた。だが、途中からは輸出や生産の勢いが鈍ったことで、踊り場を迎えている。また、国際競争力の面から見ても、株主利益の追求や起業家の育成・成長面が他国と比較して劣っているというデータもある。だが、技術力やチームワークに優れているなど、日本企業の利点も多数存在する。特に、イノベーション後の「カイゼン」については、日本企業は非常に得意とする分野であるため、イノベーションが起こせれば十分な国際競争力を持てる可能性はある。
北城氏は、イノベーションに必要な要素として、はじめに変革の重要性を盛り込んだビジョンを経営トップが提示することを挙げた。また、そのビジョンを効率的なコミュニケーションにより、社員と共有し、かつ迅速な意思決定を行うことや、総合的な評価ができる成果主義を取り入れながら、イノベーションを実現できる人材の育成に努めることが必要だと説明する。さらに、イノベーションの最終的な目的は顧客価値の拡大であり、意味のある改革にしなくてはならないと語った。
続いて北城氏は、実際に業種を問わずイノベーションを実施している企業の事例を挙げて、こうした企業が効果的なITシステムとの組み合わせによって成長を遂げていることを説明した。また、経営管理のイノベーションとしては、コアコンピタンスへの集中と、ノンコア事業からの撤退やアウトソース化、そしてベンチャー企業の買収や協業を積極的に行っていく必要性があるという。同時に環境や倫理観、公正性などに優れるCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)にも配慮していくことも、先進国の企業として必要だとしている。
一方、国家としてもイノベーションを行っていく以上、教育や科学研究にも力をいく必要があるとも説明した。最後に北城氏は、、チャールズ・ダーウィンの言葉を引用し「最も強いものや賢いものが生き残るのではない。最も変化に敏感なものが生き残る」と語り、基調講演を締めくくった。
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