駅の改札を通るとき、かつては紙の切符にはさみを入れてもらっていた。その後改札は自動化され、切符もプリペイドカードや非接触ICカードへと変化した。そして今、切符は携帯電話へと姿を変えようとしている。
東日本旅客鉄道(JR東日本)は2月22日、NTTドコモの非接触IC搭載端末「おサイフケータイ」を利用したモバイルSuicaサービスを2006年1月より開始すると発表した。携帯電話を切符や定期券として利用できるほか、駅構内のコンビニエンスストアなどで買い物をすることもできる。
SuicaはJR東日本が提供する非接触型のICカードで、定期券やプリペイドカード(イオカード)として使えるほか、電子マネー機能も備える。非接触ICはソニーのFeliCaを採用している。Suicaの発行枚数は2005年2月22日時点で1090万枚という。
左からソニー代表執行役社長の安藤国威氏、JR東日本代表取締役社長の大塚陸毅氏、NTTドコモ代表取締役社長の中村維夫氏
|
モバイルSuicaは、ドコモのおサイフケータイをSuicaの代わりに利用できるサービス。JR東日本はソニーとNTTドコモが共同で設立した、おサイフケータイ向けサービスのサポートを行うフェリカネットワークスに出資している。
モバイルSuicaでは、現在のSuicaで利用できるサービスが同じように使える。さらに携帯電話のネットワークを利用し、オンラインで電子マネーのチャージや定期券等の購入が可能だ。携帯電話の画面で電子マネーの残額や使用履歴を見ることもできる。「Suicaに通信機能と画面機能を追加したと思ってもらえればいい」(JR東日本代表取締役社長の大塚陸毅氏)。もし端末を紛失した場合には、JR東日本の窓口に新しいおサイフケータイ端末を持って再発行の手続きをするか、払い戻しの申請をすることになるという。
モバイルSuicaを導入するメリットとは
モバイルSuicaを導入するメリットについて、大塚氏はユーザーの利便性向上のほか、Suica電子マネーの利用拡大、携帯電話への広告配信などを挙げる。「(電子マネーを使った)オンライン決済やポイントサービス、情報配信、クーポン券の配布などいろいろなことができるだろう。広告収入も期待でき、モバイルSuicaの導入効果は大きい」(大塚氏)。さらに、モバイルSuicaが普及すれば切符を使う人が減り、券売機の数を減らせるという期待もある。これによって券売機のメンテナンスコストが削減でき、空いたスペースに店舗を誘致すれば新たな収入が得られるからだ。
サービス提供予定地域は、現在Suicaサービスを展開している首都圏、仙台と、新潟の一部。自動改札機で使えるほか、Suica電子マネーが利用できるすべての店舗でモバイルSuicaを使って買い物ができるという。Suicaは西日本旅客鉄道(JR西日本)の一部でも利用できるが、モバイルSuicaについては「今後、JR西日本と協議していく」(JR東日本広報)としている。
2006年度後半には、モバイルSuicaにチャージした電子マネーを使ってオンラインショッピングができるようにする。2007年度には、モバイルSuicaで新幹線指定券などを購入すれば、切符を発券せずにそのまま改札機を通れるようにする計画だとしている。
発表会場にはJR東日本のCMキャラクターをつとめる西原亜希さんが登場し、モバイルSuicaのデモンストレーションを行った
|
JR東日本ではサービス開始に備え、2005年3月より自動改札機の入出場やショッピングサービスのフィールド実験を行う。定期券/プリペイドカード機能についての実験は2004年に行っており、今回は電子マネー機能を中心に検証を行う。
NTTドコモのおサイフケータイはこれまで、mova 506iCシリーズが3機種、FOMA 900iCシリーズが1機種、901iCシリーズが3機種市場に投入されており、2月12日時点で200万台が出荷されているという。同社では2006年3月までに1000万台のおサイフケータイを出荷することを目標としている。
モバイルSuicaへの対応について、NTTドコモ代表取締役社長の中村維夫氏は「900iC、901iCシリーズでも利用できるようにする」と話す。具体的には、JR東日本のサイトからモバイルSuica用のiアプリをダウンロードする形になる。ただし、506iCシリーズの対応については未定としている。
ドコモ以外の通信事業者の対応については、「KDDI、ボーダフォンと話を進めている」(JR東日本広報)と述べるにとどめている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス