欧州連合(EU)は、デジタル著作権管理(DRM)の普及がもたらす事態について記した草案文書を発表した。DRMはソフトウェアや音楽など、著作権付きの作品を保護する際によく用いられる技術。
EUのデータ保護/プライバシーに関する諮問機関は、DRMが個人識別のための電子透かしタグと組み合わされ、人々を不当かついたずらに追跡するのに利用される危険性について特に強い懸念を示している。
EUが最近発表した「知的財産権に関連したデータ保護問題についての作業草案」によると、人々を識別/追跡するための新技術は、プラットフォームレベルだけでなく情報交換レベルでも確立されつつあるという。
EUの諮問機関では3月31日まで一般人からの同文書に関するコメントを受け付けている。
同草案によると、インターネット上で情報が交換されているところでは、ネットユーザーを追跡したり彼らの嗜好を調査するために電子透かしタグが利用されるケースが増えているという。例えば、オンライン上で音楽を購入する場合、購入者はアカウント情報や一意の名前を入力する必要があるが、そうした身元や音楽の好みといった情報は、販促活動に利用される場合がある。
同文書には、「各種の電子的著作権管理システム(ECMS)が考案/提供されているが、このことからコンピュータ操作によって至るところでユーザーを監視可能な状況が生じる危険性がある」と記されており、さらに「ECMSの中には、個人ユーザーがインターネット上で行なう、読む、聞く、見るといった全ての行動を監視し、関連するデータサブジェクトについての極めて機密性の高い情報を収集するものもある」との指摘もある。
同文書では、データを収集し、それを個人ユーザーの追跡に利用する方法の一例として、ファイル交換者を追跡したケースが挙げられている。このケースでは、インターネットサービスプロバイダ(ISP)がファイル共有者の身元情報を収集し、その情報をレコード業界の監視団体らに提供していた。
著作権保有者は通常、収集したユーザーのIPアドレスをもとに調査を行なう。この情報は後にISPが保有するユーザーデータと組み合わされる。ユーザーに違法行為の停止を求める通知を送付するため、著作権保有者がISPにユーザーの身元開示を直接請求する場合もある。
EUによると、この方法は国によって様々だという。
同文書には、「状況が変化する中で必要なことは、データ保護に関する主要な原則と、DRMの枠組みの中でそれらを適用する範囲を想起することだ」と述べられている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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