携帯電話事業者各社の2004年4月〜12月期の連結決算が出そろった。増収増益を達成したのは、2004年の年間純増数でトップに立ったKDDIのauのみ。割引プランの拡充などでARPU(契約件数あたりの平均収入)は各社とも落ち込んでおり、利用拡大の施策が課題となっている。
auの2004年4月〜12月期売上高は前年同期比15.5%増の1兆5372億円、営業利益は同12.9%増の2139億円。好業績の主な要因は契約者数の伸びにある。CDMA 1X WINで他社に先駆けてデータ通信の定額制を導入したことなどから、2004年の累計純増数は約278万件となり、NTTドコモの約217万件を上回ってトップに立った。12月末時点の契約総数は1875万件となり、前年同月に比べて17.4%増と大きく伸びている。
図1.4社の純増数の推移(電気通信事業者協会(TCA)のデータをもとに作成) |
KDDIのもう一つの携帯電話事業であるツーカーは、高齢層をターゲットとした「ツーカーS」が好調で11月には契約者数が純増に転じた。ツーカーSの契約者のほとんどは60歳以上という。高齢層は若年層に比べて事業者を変更することが少なく、安定した収益が見込める。ツーカー事業の売上高は前年同期比15.3%減の1784億円、営業利益は11.8%増の142億円となった。
一方、NTTドコモの売上高は前年同期比4.8%減の3兆6431億円、営業利益は同10.9%減の7514億円と減収減益になった。家族向けの割引サービス「ファミリー割引」の強化やパケット通信の定額制導入などが影響した。12月末時点の契約者数は4791万件で、前年同月比4.8%増にとどまっている。
ただしドコモでは、2004年第3四半期の解約率が0.95%と低いことを評価している。契約者数の多い同社にとって解約率を下げることは大きな課題となっており、ファミリー割引などの顧客囲い込み施策が効果をあげているようだ。
ボーダフォンの2004年4月〜12月期売上高は前年同期比14.4%減の1兆1027億円となった。2003年11月に固定通信事業の日本テレコムを売却したため、売上高が落ち込んだという。12月末時点の契約者数は前年同月比3.0%増の1521万件と上位2社に比べて伸び幅が小さい。第3世代携帯電話の投入が遅れたこと、割引プラン変更による市場の混乱などが影響した。
図2.4社のARPU推移(各社資料より作成) |
各社のARPUはいずれも減少傾向にある(図2)。これは音声収入の下がり幅が大きいためだ。4社の中でも第3世代携帯電話市場でトップシェアを持つauは他社に比べてARPUの下がり幅が小さく、第3四半期にはARPUがドコモを上回った。
各社はデータ通信量を伸ばすことで、音声ARPUの落ち込みをカバーしようとしている。 例えば第3四半期におけるドコモのFOMAのデータARPUは3190円で、全体のデータARPUの1820円に比べて高い。また、auのCDMA 1X WINのデータARPUは3600円で、全体のデータARPUの2倍以上となっている。いずれも通信速度が高速なうえにパケット割引制度が充実しており、定額制が利用できることなどからデータ利用量が多い。データARPUの向上が見込める新サービスの拡充が業績の1つの鍵を握りそうだ。
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