日本で唯一の総合DRAMメーカーであるエルピーダメモリが24日、2005年3月期の連結業績について大幅な下方修正を発表した。一部市場関係者のあいだでは「デジタル関連機器の販売価格下落が予想以上に急ピッチで進み、これが半導体価格の低迷や、採算の悪化を招く結果となっているようだ。ここにきて、今3月期の第3四半期(2004年4〜12月)の決算発表が本格化しているが、来期(2006年3月期)の主力ハイテク関連企業の業績に不透明感が漂いはじめた」との見方も浮上している。
エルピーダメモリの発表によれば、今3月期の同社の連結最終純利益は120億〜160億円の黒字(前期は268億円の赤字)と、従来予想に比べて100億円弱下回る見通しだという。下方修正の理由について会社側では、サーバやパソコン向け製品は堅調だったものの、携帯電話機やデジタル家電向けのDRAM、特に利益率の高い薄型テレビ、デジタルカメラ向けのDRAMが、価格の下落もあり、想定より採算が下回ったためとしている。
この業績の下方修正を受け、大和総研ではエルピーダの今期の連結最終純利益を130億円の黒字と予想した。「これにより時価は連結予想PER 29倍となる。海外の同業他社の平均は同30倍で、突出した割高感はない。ただ、足元の携帯電話機やデジタル家電向けの低迷によるプレミアDRAMの不振により、この四半期(第4四半期)で積極的に上値を追う展開にはならないだろう」(大和総研)としている。
一方、J.P.モルガン証券会社では「デジタルカメラの生産調整に伴い、DRAM出荷は今後一段と鈍ることが予想され、通期業績見通しは再度下方修正される可能性がある」として、警戒を呼びかけている。
しかし考えてみると、設立当初はその存続自体を疑問視する向きも多かったDRAM専業の業態で、今3月期はついに連結最終損益が黒字に転換する見込みであることは変わらない。したがって、「第3四半期の落ち込みは一時的なもの。(全体の)半導体出荷数量は11、12月と前年同月比で2ケタのプラスが続いており、需要が拡大するなか価格下落だけに焦点を当てて、必要以上に危機感をあおるのはあまり意味があるとは言えない」(市場関係者)との楽観的な見方があることも事実だ。
ただ、エルピーダメモリの最近の株価推移をみると、年明け以降もかろうじて4000円台をキープしていたものが、今回の業績下方修正により一気に下落、一時3600円台まで売り込まれる場面もあった。同社は昨年11月15日に新規上場したが、その時の公開価格が3500円、上場後の初値が3610円となっている。短期間の調整で再び4000円台への復帰を果たすことができないと、公開価格割れという事態も起こりかねない状況となっている。
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