バックアップとデータのありか

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 1月末にもなると、テストやレポートのシーズンも佳境に入っている。このシーズン毎度の事ながら、メッセンジャーのコンタクトリストを見ていると徹夜組の多いこと。テスト前の一夜漬けは中学・高校生でも当たり前の事だが、レポートもまた徹夜の原因の1つだ。

 ワードプロセッサでレポートを作成する片づくレポートももちろんあるし、テストがある授業でも、スライド資料はウェブサイトで配布されるので、テスト勉強にもパソコンは必要になる。また、テストやレポートのほかにプレゼンテーションでの評価も多い。

 スライドを作成したり、課題となっている作品の画像を作成したり、あるいはムービーでの提出や発表もある。画像やムービーの作成は"重たい作業"になるが、ノートパソコンの性能も上がってきたので、学校備え付けの高性能なコンピュータのように快適に動くわけではないが、そつなくこなしてくれる。

 そつなくこなしてくれているように見えるが、しかしPCを酷使していることに変わりはない。この集中的な酷使は春学期・秋学期末にそれぞれ1回ずつあるとすれば、今年の1年生で2回目、2年生で4回目になる。その他にも中間レポートや試験の時期に同じような酷使があるかもしれない。すると、ノートパソコンが壊れることがある。いくら大切に使っていても誰にでも起こり得る危機的状況で、僕も2004年の11月頃にそれを体験したばかりだった。

 ノートパソコンが壊れたショックから立ち直って冷静になったときの最大の関心事は、そのデータを救い出せるかどうかだ。SFCの学生で普段からデータのバックアップを取っている用心深い人は少ないようだ。多くの学生が共同購入で入学時に同じノートパソコンを購入するので、同学年の友人の何人かが「ノートパソコンの調子が悪い」「壊れた」と言い出すと、データへの危機管理の意識が芽生え始める。

 ここでSFCのデータの保存先が変化してきた経緯に触れておこう。僕がSFCに入学した当初の1999年頃を振り返ると、ちょうど自分のノートパソコンにデータを保存し始めた変化の時期だったのではないだろうか。それまでは、電子メールを読むときも、レポートの文章作成から整形・印刷までも、ターミナルからSFCのホストに接続してUnix環境で作業をしていた。

 データはすべて学校のサーバに蓄積されていたので、どのコンピュータを使うときでもネットワークに繋がりさえすれば同じ環境だった。持ち歩いていた自分のノートパソコンは学校のホストに繋ぐための窓のような役割だったし、学校備え付けのコンピュータを使うときも不便はなかった。

 ところが、ノートパソコンの高性能化と大容量化に伴ってデータの保存先が変化した。自分のノートパソコンにメールをダウンロードするようになったり、作業のデータも手元に置いて作業をするようになったり。自分のノートパソコンにデータがあるので、もしも学校備え付けのコンピュータを使うときには、データをいったん学校のコンピュータに移して作業をし、終わったらまたノートパソコンにデータを戻さなければならない。

 データの移動の面倒くささから、酷使してでも自分のノートパソコンで作業を完結させようとする。そもそもデータの移し替えが面倒でノートパソコンで完結させようとするのだ。他のコンピュータで作業するわけでもないのにバックアップを取ろうとは、なかなか考えないようである。

 さてノートパソコンの危機的状況の話に戻る。周りの友人によってデータの危機管理の必要性を認識して、バックアップを取ろうと意識する。SFCの学生はネットワーク上に1GBのストレージを与えられているので、FTPソフトで学校のサーバ上にバックアップを取るのが最も手っ取り早い手段だと言える。

 しかし「FTPソフトが介在するのでネットワーク上にバックアップを取るのは億劫だ」とある学生が言う。「ネットワークに繋がっていなければデータにアクセスできないなんて不安」なのだそうだ。キャンパスにいるときも家にいるときもインターネットの常時接続環境にいるはずなのに、と首をかしげてしまうが、こう続ける。「手元にデータがある感覚がしなくて…」

 そこでSFCの学生の多くが、世の中の多くのPCユーザー同様に活用しているストレージがUSBメモリだ。必要なデータのバックアップから友人とのデータの受け渡しまで幅広く活躍中だが、256MBや512MBなどのやや大きめの容量を選んでいる人も多い。

 プレゼンテーションで評価される授業では、パソコンとプロジェクターとのつなぎ換えの時間がもったいないとして、「(できれば)USBメモリにプレゼンテーションのファイルをコピーして持参して下さい」などと連絡がある場合すらある。ケータイのストラップにくっつけたり、化粧ポーチに入れていたり、ポケットにそのまま入れていたり。ものすごく身近なバックアップ用のストレージになっている。

 iPodもまたストレージの役割を果たす。SFCでもミュージックプレイヤーとして広く普及しているが、グラフィックスやムービーを編集する人は「研究室と自宅にあるパワフルなマシンで10GB近くのデータを編集するには欠かせないストレージ」と、大容量ストレージとして重宝しているようだ。音楽まで聴くことができる。

 しかしiPodをストレージとして活用するときに手軽ではない点もある。それはパソコンとの接続だ。iPodに付属してくるFireWireかUSB 2.0のケーブルが必要であり、USBメモリのようにそれさえあればパソコンに直接接続できるという手軽さはない。これに比べて、容量の面では劣るが新たに発売されたiPod shuffleは、音楽も聴けてUSBメモリのようなストレージとしての手軽さも実現しているので、SFCの学生には流行りそうだ。

 ストレージのローカル至上主義が進行しているように思われるSFCにおいて、唯一と言っていいであろう、逆行している動きはBlogの普及だ。Blogは当然のことながら、公開されるウェブ上に情報を蓄積していく。日記やデジタルカメラやケータイの画像といった日常のコンテンツに混じって、研究や授業のメモをBlogに書き込んでおく学生も多い。

 ウェブブラウザとインターネット接続環境さえあれば、自分のノートパソコンに限らずどこからでも書き込むことができるし、情報を参照することもできる。これはUnix環境で学校のサーバ側に情報をすべてため込んでいたときの操作性に似ている。しかし、Blogの普及がローカルからネットワーク上へデータのありかが変化していくきっかけと捉えてよいかどうかはまだわからない。

 ネットワーク、自分のノートパソコンのハードディスク、USBメモリ、iPod、そしてBlogと、データの保存先が多様化してきている。バックアップが取ってあれば安心ではあるが、必要な時にどこにデータがあったかを探すのがなかなか面倒そうだ。しかもどれが最新のものかを探し当てるのはさらに骨だ。

 このように分散したデータを探し当てるために活用できるツールが、現在活発に開拓されている分野であるデスクトップ検索ということになる。ローカルとインターネット上のデータはそのままでも検索できそうだが、可能性のある全ストレージから検索をしたいと思った場合は、学校のサーバをマウントし、USBメモリやiPodを接続した上で検索の網をかける必要がある。

 個人のデータのありかを検索する。このテーマの解決には、個人がデータを扱う際のクセを学習することがポイントだと思う。ユーザーがモバイル中心・デスクトップ中心といったコンピュータを扱う環境はどこなのか、どんな種類やサイズのデータを多く扱っているか、保存先やファイル命名に自分で決めたルールがあるか。これらの行動を参考にすれば、ローカルやネット、外部ストレージなどを通してデータのありかにより素早くたどり着くことができるだろう。

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