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放送・通信・家電融合のグランドデザインを求めて:2005年のキーワード - (page 2)

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 ユーザー中心や顧客満足という、供給者論理とは異なる視点の重要性が叫ばれて久しいものの、すでにある商品をいかに顧客の状況に押し込むかというレベルでしか実践されてこなかったのが現実だろう。しかし、技術が技術それ自体のために進化し、技術に合わせて生活をするのに疲れた人は多いし、最初からそんな生活をすることを投げている人も多い。

 だからこそ、最先端の技術をそのまま丸ごと利用者に学習までさせて押し売るよりも、「本当は×××なんだけれどなぁ」というちょっとした不便を解消するために最先端でなくとも既存の技術を用いる方が意味があるはずだ。しかし、表面上忘れたことになっている欲望は、アンケートや表面的なインタビューでは聞き出すことができない。きっと偏在しているに違いないのだが、それを発見するには、かなりの「インサイト(直感)」が必要なことは間違いない。

 とはいえ、あてずっぽうでインサイト探しをするのも大変だ。であれば、そんな「忘れたことになっている欲望」が集まっていそうな領域はないものだろうか。

インフォーメーション・デバイド:ずっとあった格差を改めて顕在化する

 もちろん、「忘れたことになっている欲望」を発見できても、それを解決することのできる技術が存在していないことには致し方ないのも当然だ。これを逆転させて、ギャップを埋める技術や環境が整備されたのだけれど、依然としてギャップが存在し続けている領域を見つける=コンシューマー・インサイトを得ることができないだろうか。

 例えば、e-Japan戦略Iのおかげで日本はブロードバンドを最も安く全国どこでも利用できるようになった。また、PCなどに明るくない人でも、簡単にインターネット経由でさまざまな情報(とはいえ、依然としてテキスト情報に限られるが)を得ることができるようになった。しかし、すでに存在するテレビ局やラジオ局の数は変わることはなく、依然として東京と地方、特に郊外では情報格差が存在し続けている。例えば、全国で6局しかないテレビ東京系ネットワークはアニメ番組の宝庫であり、子供たちにとっては人気が高い。しかし、全国の過半数の地域では、それらアニメ番組を見ることができない、あるいは東京や大阪、名古屋とは時間差でしか楽しむことしかできない子供たちが多いのだ。これは、彼らが住む地域が郊外だからというだけで情報という面で不利益が生じているとしか考えられない。

 アナログ技術が基になっていた時代は仕方なかったかもしれない。それを反映した、放送局の免許発行数の規定や、地域の経済格差の問題などがあったからだ。しかし、現在では衛星、光ファイバーやADSLなどで放送番組は全国至る所まで再配信できるように整備されているのだ。また、デジタル地上放送ではSFN(単一周波数ネットワーク)という技術標準のおかげで同じ電波帯域で中継が可能なため、(ひとつの局をVHFからUHFに変換して中継するなど)チャンネルを変えることなく、東京のキー局の放送を全国津々浦々までリレー中継することが可能になっている。だが、電波の免許が県単位で発行されているために、実際にはこの技術の利点が最大限に活用されているとは言い難い。

 最新の技術そのものは格差を解消することを目的に作られたにもかかわらず、旧来から継続的に存在する制度が邪魔をしているという矛盾が生じているのだ。

 これまで「仕方ない」ことになっていたインフォーメーション・デバイドが、デジタル・デバイドを圧縮するために整備された環境によって、不自然なギャップとして認識されかねなくなってきている。しょうがなかった格差を補正できるにもかかわらず補正できないという現実を、コンシューマー・インサイトとしてとらえることは決して難しくはないのだ。

視座の転換という点で共通するキーワード

 今回掲げた3つのキーワードは、単に企業の商品開発やマーケティングなどを含めた事業戦略としてだけではなく、行政や政策立案という視点でも十分に機能するものに違いない。むしろ、小手先の方法論に終始し、本来の受益者である国民や直接顧客のためにではなく、既得権益をむさぼる既存事業者や流通窓口などのために議論がなされる傾向が強い現在、「本当は何のために」という素朴かつ本質的な疑問を改めて問うことが重要になりつつある。

 ずっと望まれながらも依然として道筋が見えなかった放送・通信・家電の融合は、ようやくここに来て糸口が見えてきた。その糸口をはっきりと認識し、それをより明確化するためのキーワードが、「越境」であり、「コンシューマー・インサイト」であり、そして「インフォーメーション・デバイド」である。これらは何のための議論なのかを改めて考えるという、きわめて単純ながら本質的な「視座の転換」によって得られるという点で共通し、それらは同じ理由から連続したひとつのストーリーとして語れるのではないかという僕なりの仮説をご披露した。

 果たしてこれらのキーワードが2005年のナビゲーターとして役に立ったかどうかは、(もし続いていれば)来年のこのコラムででも自己評価してみようか。

# 昨年最後のコラムで予告した新会社「Think」のお話は、次回以降、改めてさせてください。

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